「推薦状なんて書けませんよ」ジュラシック・ワールド ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
推薦状なんて書けませんよ
「ジュラシック・パーク」を初めて見た時の驚きと感動は期待していなかった。なぜなら、この22年間の間に我々は中つ国へ指輪を捨てる旅に出掛けたし、パンドラという未知の惑星を飛び回ってきた。今更、恐竜が大暴れしたところで驚くことは何もないだろう…
しかし、映画を見て驚いた、いや愕然とした。「ジュラシック・ワールド」は恐竜映画ではなく、紛れもない怪獣映画であったからである。
「ジュラシック・パーク」の勝因は“恐竜”を“リアルな生き物”として描いことが大きい。主人公が恐竜博士だったこともあり、彼は恐竜の生態を知っていた。当時の学説に基づくトピックも多く盛り込まれており、そのことが、CGやアニマトロニクスの恐竜たちに生き物としての信憑性を与えていたのだ。
「ジュラシック・ワールド」にはそれがない。新種のハイブリッド恐竜は銃弾をものともせずに人に襲いかかるし、ラプトルの生態はご都合主義的に描かれる。主人公が恐竜の飼育員であるのなら、もっと恐竜たちの個性や生態を知ってて然るべきなのに、ただ逃げ惑う、ただ利用するでは、芸がない。もっとも肉食恐竜だけが活躍すること自体、恐竜=獰猛な生き物というステレオタイプな演出であり、もはや恐竜であろうと、エイリアンであろうと今作の話は成立してしまうのだ。
「ジュラシック・パーク」のラストで博士が社長にこう告げる「慎重に検討してみましたが、(パークの)推薦状なんて書けませんよ」。私はこのセリフをコリン・トレボロウ監督に伝えたい。