「誰もが羨む人生って、他人が決める事じゃない」はじまりは5つ星ホテルから もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
誰もが羨む人生って、他人が決める事じゃない
五つ星ホテルの格付けをチェックする覆面調査員の物語です。
オープニングのシーンからパリの高級ホテルの様々な場所のホコリをチェックしたり、ベットカバーの匂いをかいだり、カーテンの汚れを見たり…小姑よろしくな仕事っぷりは「へー、こんなことやるんだ。まぁ、やるんだろうけど」と見たことのない仕事の世界にちょっと興味を惹かれました。
スイスのホテルでは、自分だけでなく他のカップルに対するコンシェルジュの対応や案内を見て、ホテルの格付けを下げる話を支配人にしたりとか、ルームサービスを頼んでから出てくるまでの時間をはかったり、ワインの温度やスープの温度を確認したりと…。本当に、こんな仕事あるんだなぁと感心。
で、肝心のお話の方ですが、主人公の覆面調査員イレーネは年間の9割を海外の高級ホテルの覆面調査をして過ごし、ただで海外の高級ホテルを泊まりあるく生活。まぁ、白いスーツで颯爽とホテルに泊まる姿を見ても、細々と的確に、かつ機敏にホテルの様々なことをチェックして行く姿を見るに、ほんっと世界を股に掛けるキャリアウーマンって感じで、しかもとっても知的ないい女ときたら、誰でも羨望の生活だし、本人も誇りに思って、かつ、憧れの生き方とすら思っていたのではないでしょうか?
たまにイタリアに戻れば親友が待っていてくれたり、妹が料理を作ったり一緒に過ごしてくれたり、姪っ子達に好かれてて、一緒に遊んだり。自由気ままにバリバリ働きながらも待っていてくれる人がいる。そんなイレーネの人生は順風そのもの…。
と思いきや、ホテルの調査をしながら様々な人に出会い、人生の本当の価値を見つめ直す…。
親友のアンドレアは有機野菜を販売しながら料理が趣味で、自分の生活と考え方にとても満足している風の男性。妹のシルヴィアは音楽家夫婦で2人の可愛い娘にも恵まれ、家庭も仕事も両立した順風な女性の人生をおくっている。
が、
アンドレアは仕事上で知り合った女性との間に子供ができてしまい、彼女との人生を考え始める。シルヴィアは夫とのセックスレスに悩みながら、自由奔放に生きる姉に嫉妬?をし喧嘩に発展。
きっとイレーネにとって、「帰る場所」だった2人との仲が今まで通りに行かないことはとても大きな問題で、その差中に調査中に出会った人々との言葉のやりとりで、自分の人生を考え始める。
名前は忘れてしまいましたが、ベルリンのホテルで出会ったジェンダーと心理学だっけな?についてテレビで公演をする女性との出会いと突然の別れがイレーネの心の奥のモヤモヤを一気に爆発させるきっかけに…。
自分の気持ちに嘘なく、新たなことに取り組んで冒険をしていこうと気付いたイレーネは一路中国へ…。
といったお話です。
イレーネはきっと、可愛い姪っ子や、親身になってくれる親友や妹の存在に甘えつつ、独り身で仕事をバリバリしながら自由に暮らす自分の姿に、本当の自分の気持ちをごまかしてきたのかもしれませんね。
人なら誰にでも、今自分の置かれている状況を打破する困難を選ぶより、甘んじて正当化することなんてたくさんあると思うし、それに気付けただけでもイレーネにとって良い人生になればいいなっておもいました。
最後の中国に発つ時の、「自分がした旅行で困難とかあった時に、人に進めることができますか?」的なセリフからの幸せは人それぞれ的なくくり方はとても感じ入りました。人のことなんて気にしても仕方ないし、自分の人生自分でかんじないとなって。
そして、これらの話とは別に、世界中のきらびやかなホテルの豪華絢爛な映像はとても素敵でした!