劇場公開日 1983年6月4日

「【お互いにキチンと向き合わない、どこかオカシナ家族を描いた、ブラックシュールでシニカルでアイロニックなコメディ映画。】」家族ゲーム NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【お互いにキチンと向き合わない、どこかオカシナ家族を描いた、ブラックシュールでシニカルでアイロニックなコメディ映画。】

2021年10月21日
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鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波、VOD

怖い

知的

難しい

ー トニカク、ヌマタ家の夫婦と二人の息子、(特に高校受験を控えても成績の上がらないシゲユキ(宮川一朗太))が不気味と言って良いほど、どこかおかしい。ー

<caution 内容に触れています。>

・シゲユキの成績を上げるために雇われた家庭教師、ヨシモト(松田優作)も相当、破天荒な男である。勉強をさぼるシゲユキに平手打ちを食らわしたり・・、プロレスの技を仕掛けたり・・。

・シゲユキも冒頭から仮病を使って学校を休み、上手く行くと中学生とは思えない、嫌ーな笑いを浮かべる・・。
 母親に"何歳ごろ生理が来たのか"、と、にや付きながら聞くシーンなどは・・。

・夫(伊丹十三)は、成績成績と口やかましいが、全て妻任せ。
風呂で飲み物をチューチュー啜ったり、目玉焼きの黄身がチューチュー吸えない事に、怒る。
ー あの目玉焼きのシーンは、故伊丹氏自身の目玉焼きの食べ方について書いたエッセーがヒントだったのだろうか・・。ー

・妻(由紀さおり)は、夫の顔色を窺いつつ、表面上は子供たちの成績を気にしているが、シゲユキの志望校変更を、家庭教師のヨシモトに頼んだりしている・・。

・隣の奥さん(戸川純! 後期、ゲルニカ好きだったなあ・・。)も、訳の分からない神経症的な態度を取るし・・。
- 戸川さん、そのままじゃない!スイマセン。-

<有名な、横一列に並んだ、ヌマタ家の食卓シーン。
 ここも、笑えるのではあるが、大笑いというよりは何故だか不気味さの方が勝るのである。
 シゲユキが見事に第一志望の高校に合格したお祝いの席で、今度は父が優秀だった兄シュンイチの態度に腹を立てる。
 と、それまでオカシナ食事の仕方をしていたヨシモトが、
”家族の象徴ともいえる横長の食卓”
を見事に縦にひっくり返し、卓上のご馳走をぶちまけて”ごちそうさまでした・・。”と言って去る。
 一般的にこの作品はコメディ映画と謳われているが、久方振りに見返すと、ホラーテイストも十分にあると思った作品である。
 ラストのヘリコプターが爆音を響かせる中、眠りについている兄弟の姿。
 そして母もいつの間にか眠りについている。不穏極まりないラストである。>

NOBU