「最高だった」レッド・ファミリー 湯の香さんの映画レビュー(感想・評価)
最高だった
予告編を見て、きれいな女優さんが出ているので、ぜひ見てみたいと思った。しかし、つまらない映画なら見て損をするのでレビューを読んでから、行くかやめるか決めることにした。よかった、感動したという高い評価と、真逆に、駄作つまらない最低などという低い評価に真っ二つに分かれていたので、随分、迷った。結局、映画館でこの美人の人に会いたいという欲求に負けて、金を損するであろうと思われる「駄作」の映画を見ることに決めた。同時に、そんなにひどい作品なら、本当につまらないのか、それともレビューほど最低ではないのかをこの目で自分で確かめてみようと思った。
サービスデーということで平日にも関わらず、狭い館内はほぼ満席に近かった。
私としては笑える場面は2、3箇所あった。しかし、この映画はお笑いの狙った映画作品ではなく、あくまでも真面目な、シリアス、厳粛な作品である。笑いや受けをねらった軽いコメディー、娯楽映画ではない。不必要な笑いを排した、日本のサスペンスドラマのような作風、タッチに仕上がっている。作品紹介に、笑いなどという文言(もんごん)が作品紹介にあるがそれは紹介文が間違っているか、紹介文を書いた人や、それを承認した役員の感性にはそう映っただけであろう。
主人公ともいうべき、北の(赤い)擬似家族の妻役...班長殿の役のキム・ユミさん(34)170cmは美人度はすごかった。2012年のミス・コリア真(1番)の栄光に輝いた同姓同名の女優とは別人であるが、この作品を見て私は、ナスターシャ・キンスキーの「テス」を見たときの感動を思い出した。あの作品のキンスキーも美しかった。あの時と同じくらいの満足感をこの映画で私は味あわせていただいた。その意味で言えば、もし他の女優を起用していれば評価は星3つくらいの平凡な作品と評価したかも知れない。
キム・ユミは、どの表情も私にとっては魅力的で、それがこの映画のすべてである。脇を(?)固める他の出演者もいずれ劣らず美男美女ぞろいであり、且つ、演技がうまい。
私は韓国政府には反韓の立場なので、2009年作品の「僕の妻はスーパーウーマン」以外は基本的にテレビで韓流(はんりゅう)ドラマは見ない。しかし、この映画を見て、少女時代という女性歌手グループのみならず韓国映画陣の美形や演技のレベルの高さに愕かされた。
脚本、ストーリーの矛盾を指摘する感想があったので、さぞ、ひどいものと覚悟して見ていたが、それほど気になるほどのものではなかった。矛盾点を言うのであれば洋の東西問わず、大抵の映画作品やテレビドラマには必ずと言っていいほどある。ジブリ作品など最たるものである。しかし、絵の美しさや評判や予告編などの惹かれたり騙されて、あるいは単にお決まりの惰性で見に行ってしまうこともある。
作品終番で客席のあちこちからすすり泣きというか、鼻水のすすり上げる音が最後まで聞こえていた。私個人では、悲しくもなく、気の毒にも感じなかったので、そこまで涙腺が緩むほどの感興や感情移入がなかったので、淡々と見終えた。
しかし、北の工作員の過酷で苛烈な実態はある程度理解できた。誇張されていたり、南の人が想像で描いている面があるとしても。
できれば、私が惚れ込んだキム・ユミと北の擬似家族の一人ひとりが幸福なハッピーエンドで終わって欲しかった。が、かなわぬ無理な要求であろう。北の工作員(スパイ)及び北朝鮮の独裁体制の非人間的な、厳しく非常な現実を活写した作品の悲しい帰結なのかも知れない。
評価が別れる各レビュー。結局は同じ作品を見ても、見る人本人がどんな事に価値を置いているかで、感想や評価に差異が出てくるから、一概に自分と異なる評価や感想を読んでも正しいとか間違っているとかは言えない。自分の感じたことが本人にとっては、すべてであると感じた。