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蟻族の青春
光あるところに影がある。
今年、米国を抜き世界1位の経済大国となる勢いの中国だが、全ての中国人民が共に豊かになる筈もなく、落ち零れていく人々もいる。
この作品は、大卒でありながら就職も出来ず、非正規雇用労働者として働き、家賃の安い北京郊外の集合住宅に住む多くの若者たち、通称「蟻族」の青春を描いている。
彼らの住んでいる場所は正に「ドヤ街」という感じで、近代的なビルが立ち並ぶ中心地と比べると、同じ北京とは思えない程だ。
私は本作品を観て初めて中国の「蟻族」の存在を知ったが、以前の日本も長引く不況で、ワーキングプアやロストジェネレーションが社会問題としてクローズアップされたが、国は違えど若者が抱える問題は同じだと思う。
映画では「蟻族」を代表する三人の若者、非正規社員として不安定な生活を送りながら名のある実業家を目指すワン・シュー、デザイナーを夢見ながら地元の小さな裁縫店で働くランラン、その女性の「ひも」として無為な日々を過ごし、夢見ることもないチャン・フイ。
彼らは夫々、この様な生活から抜け出そうと足掻くが、却って袋小路に陥っていく。
この作品には、監督であるヤン・フイロンの実体験や自画像を投影したとのことなので、描かれたエピソードの一つ一つがリアルで観ていて胸が痛む。
映画は辛い現実を描きながら、その中に一条の光や三人の友情を滲ませていく。
今の中国の影の一面を青春ドラマとして鮮やかに切り取ったヤン監督が、今後どのような中国を描くのか楽しみだ!
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