「恋は鏡を見るようなものだと思う。」アデル、ブルーは熱い色 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
恋は鏡を見るようなものだと思う。
恋は鏡を見るようなものだと思う。
相手という鏡が自分がどんな人間か映し出してくれる。
恋をすると自分自身がよく分かる。
高校生のアデル(アデル・エグザルコプロス)が、青い髪の美大生エマ(レア・セドゥ)
と出会い、その個性的な魅力に惹かれていく。当時、二人の女の子の、激しいセックスシーンが話題となりました。
でもそんなシーンより、アデルを愛しそうに見つめるエマの視線。またアデルの常に半開きの無防備な唇とふわっとした表情、泣きながらチョコレート菓子を食べるぐちゃっとした頬とか、シャワーを浴びて長い髪から滴をぎゅっと絞り落とすシーンが思い出されます。
アデルの所作に、凄く惹かれました。美しいというより、子供っぽくて粗野だけど、色気がある。それって大人でもなく子供でもない、蛙に足が生えた異形の生き物、この時だけの輝き、一瞬の歪な魅力だと思う。
ストーリーはシンプル。アデルがエマと出会い、恋に落ち、すれ違い、別れを向かえる。でも惹きつけられるのは、誰しも経験している「初恋の衝撃」を描いているからではないでしょうか?
また、全てのシーンを丁寧に丁寧に重ねていってるので(179分!)、アデルに足が生えたり、取れて大人になったりするその一瞬が、はっとするほど良く分かります。あ、しつこく蛙に例えてすみません。なんとなくです。アデルがエマに恋すると、至る所にブルーが登場するのも印象的です。
アデルは堅実な中流家庭に育ち、教師になるのが夢です。文学が好きで、恐らく個性的な感性を持っていますが、夢を追うことはしません。
かたやエマの家庭は、芸術を愛する富裕層です。自身も画家になるのが夢です。お互いの家で食事をするシーンが、価値観の違いを表しています。
そしてお互いの鏡に映る自分自身と向き合い、そして相手と比較した時に、全く違うと分かる。分かったとしても、歩み寄れない。彼女達が若いから?未熟だから?いいや、大人になればなるほど、恋愛の正解が分らなくなるんです(笑)!
いくらマイケルに、こう唄われたとしてもです。
I'm starting with the man in the mirror.
I'm asking him to change his ways.
あ、映画の挿入歌ではありません。すみません。
違うことから生まれる、焦燥感、孤独、嫉妬、相手に認められない苦痛。それから逃げるように、アデルは浮気をしてしまいます。それがエマに知られることとなる。
二人の言い合うシーンは凄かった!「売女」と罵るエマと、泣きじゃくりながら赦しを請うアデル。「喧嘩は止めて!」と間に入らなくちゃいけないような、臨場感です。近い!まるで目の前で繰り広げられてるようで、オロオロしました。
第66回カンヌ国際映画祭で、スピルバーグ審査委員長より、パルム・ドールがアデルとレアにも特別に授与されました。うん、あげたくなる気持ちも分かります!
でも女の子って、激しくて、狡くて、すごく可愛いですね。
あぁ、戻りたい!