「食わせるだけじゃ介護にならず。」サクラサク ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
食わせるだけじゃ介護にならず。
やがて起きそうな身近な問題であるだけに少し怖かった。
あれほど崩壊した一家が、たった数日の旅行であんなに
和解できちゃうものか?という疑問点はあるにしろ、
崩壊したまま終わってしまうよりはずっと安心できるので、
一瞬でもファンタジーを味わったんだ♪と思っておきたい。
現にこんな一家は多いのではないだろうか。
今の若夫婦は(お互いに)協力し合う関係率が高いようだが、
ひと昔前はこんな風に、家事も育児も女房に任せっきりの、
仕事人間のお父さん。というのが当たり前に存在していた。
我が家の父もそうだった。一緒に遊んだような記憶はない。
父が何かの行事で参加するといえば運動会ぐらいだったか。
会話もなければ一緒に出掛けたりもしない。
必然的に母親の不満は堪って、私はその愚痴聞き係だった。
今作での妻の態度、昭子の捻くれようは容易に理解できる。
夫に浮気をされ、家事と育児、さらには介護も押し付けられ、
話をしたいのに聞いてくれる人もいない、もう精神的に参って
しまったのだろう。それでも家族を置き去りにして家を出る
ことはしなかったのだし、心では夫を想っているのが分かる。
今まで彼女や子供達の心を慰めてきたのが祖父なのだろう。
藤竜也がこんな役をやるようになったか!?とややショックな
気分になりながらも、相変わらず独特の口調で和ませてくれた。
こんなに可愛いお爺ちゃんを、誰が嫌いになれようか。
母親が見放してしまった祖父を親身に介護していたのは、実は
フリーターの息子だった。父親はまさかの事実に愕然とする。
自分が見てきた情けない息子の姿、かなり自分勝手な娘の態度、
この期に及んで世話をしない妻の態度、それはすべてアンタが
この家族に齎してきたことなんだよ、と言わんばかりの展開に。
昔よく言われた、
「誰が食わせてやったと思ってるんだ!」なんて台詞は通用しない^^;
どのみち、家族に辛い出来事が起こるのは普通のことである。
だから、まさかの時に助け合える関係を築いておいた方がいい。
日々声を掛け合ってはお互いに感謝の気持ちを伝え合うとか、
自分が誰の世話になっているかをしっかり認識しておくべきだ。
今作では「褒める」ことや「頭を下げる」ことを強調していたが、
これって案外、親が子供にできない(しない)ものだったりする。
「ありがとう」と言われて嬉しくない人はいないし、「ゴメンね」と
謝られて逆上する人はいない。上下やプライドを超えて互いを
認め合うことが和解に繋がるんじゃないだろうか。そう思った。
(ファンタジーもリアル面で勉強になる。人生サクラサクといいな)