「前田敦子がちょっと好きになってしまった(笑)」もらとりあむタマ子 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
前田敦子がちょっと好きになってしまった(笑)
山下敦弘監督が、「苦役列車」で組んだ前田敦子を主演に迎えて贈る脱力系ヒューマンコメディ。
大学を卒業したはいいものの、実家に戻って、食っちゃ寝食っちゃ寝の毎日を繰り返すタマ子の一年を描く。
食ってるか寝てるか、漫画読んでるかゲームしてるか、タマ子の名(迷)言が面白い。
「ダメだな、日本は」
「少なくとも、今ではない!」
「一番ダメなのは、(父親が)私に家出てけって言えないとこですよ」
「まだ決めてないけど、どっか行くでしょ」
「まあ、そんなもんだな」
上機嫌の父親に「タ〜マちゃん」と言われ舌打ちし、密かな夢の為にこっそり“可愛い”写真を撮ったり、おばさんのようにママチャリを走らせ、近所の中坊を手下のようにこき使い(その中坊に「あの人、友達居ないから」と言われる始末…)、父に年甲斐もなく恋人が出来た事を知り何か面白くない…。
こんなぐうたらヒロインに元人気アイドルを配するとは、山下監督のセンスがナイス。
娘と父親の微妙な距離感も絶妙。
ぐうたら娘を横目にせっせと仕事し、家事をする父。
そんな父の前で堂々とぐうたらする娘。
最初は注意していたが、次第に物言えない父。
そんな父に呆れ、愚痴やダメ出しをする娘。
父は娘が可愛いし、娘は父にハッキリ言ってほしい…これが父で、これが娘なんだろうなぁ。
父娘ドラマとしてもなかなか。
女優・前田敦子は評価が分かれている。
キネマ旬報などでは高く評価されているが、ネットなどではボロクソに酷評。(最もネットはアンチAKBの意見なのでどうでもいいが)
個人的には悪くない女優の道を歩んでいると思う。
「苦役列車」や本作では意欲的な作品に出演し、「クロユリ団地」では若手女優の登竜門であるジャパニーズホラー、今夏の「エイトレンジャー2」ではエンタメ映画のヒロイン…バラエティーにも富んでいる。
本作でも、終始仏頂面、ダサいジャージ姿、大口開けてロールキャベツを頬張り、「ん〜」とか「あ〜」とか自然体。
「少なくとも、今ではない!」と言い放った時は肝の据わった演技。
前田敦子の代表作になるだろうし、本人も自信を持って言っていい。
父親役・康すおんの受け身の好助演が秀逸!
タマ子に顎で使われる中学生・伊東清矢くんのそこら辺に居そうな雰囲気も最高(笑)
ぐうたらヒロインもいよいよ動く。
押し付けがましいメッセージより、ちょっと背中を押してくれるようなそんな作風が好き。