劇場公開日 2025年7月4日

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「ソダーバーグには珍しいメロドラマは可笑しくて切ない」恋するリベラーチェ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ソダーバーグには珍しいメロドラマは可笑しくて切ない

2025年8月31日
PCから投稿

ソダーバーグの監督作の中でも、可笑しさと切実さが非常にバランスよく配置されたラブストーリー。怜悧なソダーバーグらしく、ベタベタなロマンチシズムは思いっきり遠ざけられていて、欲得もあからさまで身も蓋もない関係性を描いているのに、いい具合にバカバカしくて哀切さもある。マット・デイモンはバカ面が似合う役をさせたら天下一品な俳優だが、ソダーバーグ作品ではほかでは到底観られないようなバカ面を晒してくれることが多く、特に本作ではバカ面がピュアさにも直結しているのがいい。

映画祭にも出品され日本では劇場公開されているが、アメリカでは映画スタジオから却下されてHBOのテレビ作品として製作。アカデミー賞ではなくエミー賞を大量受賞したので、映画スタジオも後悔したに違いない。断られた理由は「ゲイのラブストーリーは売れない」だったそうで、ソダーバーグは『ブロークバック・マウンテン』以降にそんなことを言われるとは!と驚きを語っている。確かにこれくらいフラットなテンションで描かれるゲイのラブストーリーはあまり観たことがなく、売り込まれた方も戸惑ったのかもしれない。

主演のマット・デイモン、マイケル・ダグラスの表情が素晴らしい一方で、表情が動かかなくなった美容整形医にロブ・ロウをキャスティングしたセンスも最高。

村山章
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