劇場公開日 2013年11月9日

  • 予告編を見る

「不幸な実話」THE ICEMAN 氷の処刑人 FUMITさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0不幸な実話

2013年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

単純

クリリンスキーは分かっていたんだと思う。自分の中の狂気に。
自分と弟は同じなのだということに。大きな何かが欠落した人格異常者だということに。

でも、彼の「良心」は決してそれを認めたくない。
そんな彼にとって「家族」こそが彼の「理性」であり、彼を表面上の社会適合者として存在し続けさせてくれる唯一の支えだったんだよ。だから、家族のこととなると発作的に常軌を逸した行動をしてしまう。

彼にそんな「家族」を維持し、自分を維持することこそが全てで、「命を奪う」ということに何の感慨も無かったのかも知れない。まさに「アイスマン」のように。

だって、彼は殺し屋ではない道を選ぶこともできたはずなのだから。そのきっかけ(失業)は確かに何度もあったのだからさ。

でも、彼はそれを選ばなかった、彼にとって「殺し屋」という仕事は、単に家族を維持するための「仕事」でしかなかったんだよね、きっと。
自分の「適性に合った仕事」だと感じていたんじゃないかな?

悲劇は彼の家族だよね。何も知らずに彼を「良き夫・良き父親」として慕っていた家族。
リッチで幸せな日常が一転、「稀代の殺人鬼の家族」になってしまったのだからさ。
その後どんなに苦しんだろうか想像に難くないよ。

そのあたりが気になってネットで調べてみたんだけど、彼の奥さん、その後著書を出版したらしい、その名も「Married to the Iceman」(笑)

気の毒な家族だけど、出版だなんて、それなりに強く生きることができたみたいだね。少しホッとしたよ。

それに、彼自身の人格破綻が、彼が幼児期に加えられた親による虐待が原因だとしたら、彼もまたある意味で被害者なんだよね。

誰も幸せにならない、不幸な物語だと思ったよ。

FUMIT