「人が人を想う気持ちは純粋であって欲しいが…」シャンボンの背中 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人が人を想う気持ちは純粋であって欲しいが…
妻子が居て、老いた父を大事にして、ごく平凡な幸せな生活を送っているものの、何処か満ち足りないものを感じるジャン。
そんな時、息子の学校の若く魅力的な代理女性教師シャンボンと出会い…。
中年男性の不倫話と言ったらそれまでだが、その枠には留まらないほろ苦い大人の恋愛ドラマに仕上げたのは、洒落たフランス映画らしい。
昨年から日本の芸能界は不倫スキャンダル続くが、何処からが不倫?とつい思う。
想いを抱いた時から?
互いに想いを寄せ合い惹かれ始めた時から?
キスをした時から?
肉体関係を持ったら?
映画では一線を超えるのはいけないと分かっていても、ある時一度だけ一線を超えてしまう。
さすがにそれは不味いと思ったものの、二人の関係はそれまで。
ほんの一時、想い合い、惹かれ合い。
延々と世間を欺き、裏切るそれとは違う。
いや、決して不倫を肯定するつもりは更々ない。
ただ、人が人を想う気持ちは純粋な形であって欲しいだけ。
結局二人は想いを残しつつ、別れる。
ジャンは家に帰る。
何事も無かったように…それは無かった。
妻は気付いていたのだ。
ジャンの父の誕生パーティーの際、招かれたシャンボンは美しいバイオリンを奏で、ジャンは食い入るように見つめる。
妻はその時の夫の視線で気付いたのだ。
が、妻は何も知らないように振る舞う。
この生活に波風を立てたくない。
夫は何かしら妻に対し後ろめたい気持ちをきっと抱きつつ、何事も無かったように振る舞う。
この生活を破綻させたくない。
人を想う気持ちは大事だが、ラストシーンには、してしまった不倫の傷跡なるものを感じずにはいられなかった。
シャンボン役の女優がとても魅力的なので主人公の気持ちも分からんではない。
でも、奥さん役の女優も魅力的で困ったもの。
WOWOWの“W座からの招待状”で発掘したという本作。
結構このコーナー、好きなんだよね。