銀の匙 Silver Spoonのレビュー・感想・評価
全95件中、1~20件目を表示
要らない解毒剤
これまで「毒」を振りまいてきた吉田監督。堀北真希さんという究極のピュアネスを使っても、猛毒を振りまいた「麦子さんと」。今度は中高生中心、いや、ピンポイントにした題材の映画だ。
なるほど、ちょうど「WOOD JOB!」と正反対の映画だ。
決定的に違うのは、いわゆるリアリティの演出で、本作はドキュメンタリーチックな語り口のなかを人気俳優が自身のキャラクターそのまんまを演じて、結果リアリティからほど遠い世界を見せているのに対し、「WOOD・」は役者はキャラを主張し、世界観は決して壊さない。
これは、間違いなく「客層」を考慮した上での興行的戦略の差だろう。
結果、これまでの吉田監督の毒にうなされつつも、毒を求めてきた俺としては、見るも無残な青少年映画となってしまったことに、一応の納得はした。オレの言う無残とは無毒、といってもいい。
だからまず、俺がガタガタ言う映画ではない、ということだ。
しかし、なにより、ずいぶんとハズした役者をあえて揃えてきたなあ、と。ここまでくるとわざと、としか思えない。「麦子さんと」の堀北真希さんはだからこそ、の配役だったが、本作の役者陣にその意味はない。
また、ドキュメンタリータッチについて、「ばしゃ馬さん・」の老人ホームのシーンでものすごい違和感を感じた、やっすいドキュメンタリー感な絵がここでは全編に渡って繰り広げられる。
今回、とる題材が合わなかった、とか、メジャーに合わないとかは、関係なく、明確なターゲット層の作品で、求められる結果を出せなかったように見える。
こんな実写化なら原作者もしあわせなんじゃないか。
デビューから一貫してオリジナル脚本で勝負していた𠮷田恵輔監督が、初めて原作モノに挑戦した作品。まだ原作マンガが連載中であり、物語のどこまでを切り取っていかに再構成するかが問われたはずだが、原作では主人公が過労で倒れて参加できなかった文化祭をクライマックスに持ってきて、しかし映画では主人公を外すことなく、でも「いてほしかったのに参加できなかった人物」を別に設定するという脚色の妙に唸った。原作の核を損なうことなく、映画としてひとつの物語にまとめあげる見本だと思っている。
そして上島竜兵を校長役に起用して、その佇まいを活かして一切ギャグキャラにしないなど、適材適所で新たな面を引き出す𠮷田流キャスティングが冴えている。アイドルのオーラを消した中島健人、当時はまだ無名の脇役だけど明らかに他と違う存在感を発揮していた岸井ゆきのと矢本悠馬、実写化中でもほぼマンガそのままの役を絶妙な塩梅で演じた黒木華らの若き日の姿を見られるのも、今にしてみたらかなりのお得感がある。
「ヒメアノ~ル」や「神は見返りを求める」などスリラー描写に一目置か...
「ヒメアノ~ル」や「神は見返りを求める」などスリラー描写に一目置かれる吉田恵輔監督が漫画原作をどう面白くするんだ?と思ったけど結構真面目に面白かった。
これを機にアニメも見たし、漫画も買おうと思います。
原作を見た今分かるのは、キャラクターはかなり削ぎ落とされているということ。
アニメではメインでエピソードがあったキャラも尺の関係で影が薄いかもしれないです。
ただ八軒が食物連鎖の事実と向き合い、動物たちと向き合う姿には自分もハッとさせられた。
第一次産業を担う仕事をする人へのリスペクト、そして広大な学校で仲間と汗水たらし作り上げる食事のおいしさ、そんな青春を見届けた先に感動があった。
原作未読、アニメ未視聴
今活躍する方々が多数いらっしゃるんですが、ちょっと棒を感じて面白いです。
みんな上手くなったんだなあとしみじみできます。
ただ、それはそれとして話は面白かったです。
食べるために動物を殺すし、生きるために動物を殺します。
そういう、ちょっと目を背けたくなるようなことが描かれていて、いろんなことを考えさせられます。
「いろいろと背負っているものがあるからね」
高校生なりにも。
いただいたフライヤーに載っているキャッチコピーは「最強に理不尽な青春!!」
その背負っているものを背景に、高校生なりの夢と挫折、そのための努力・気持ちの切り替え・居場所を見つけるための落としどころ(適応能力が上がるというのは成長なのか)。相互扶助、そんな彼らと対する大人の態度。
心にグッとくる台詞・エピソードが散りばめられた漫画・映画です。『少年サンデー』連載中の2012マンガ大賞大賞他受賞作品の映画化です。
映画の出来としては突っ込みどころ有なので☆3つと言うところかな?
”背負っているもの”もライトに、淡々と(時にコメディチックに)描くから、深刻さは「大変だなあ」くらいの感想になってしまいます。
でも「絶対に観るべきだよ~」と皆に声を大にして言いたいから☆4.5。
屠殺の場面がありますが、その肉を我々は頂いている。昔だったらごく普通に庭で鶏を潰してそれが食卓に並ぶんだというのは子どもでも見ていた事実。だから隠すのではなく子どもにだって観てもらいたい映画です。
やはり原作の持つ力は大きい。(アニメは未見)
そういう漫画を映画化するとがっかりすることが多いですが、この映画は原作の世界観はそんなに壊さずに仕上がっていると思います。あれ?こんなエピソードあったけ?こういう展開になったけ?と私の勘違いかもしれないけど、すべて原作に忠実というのではなく作り変えているようです。でも言わんとしていること、その世界観は、”映画”ならではのやり方で表現しています。(例えばドキュメンタリー風の屠殺の場面の挿入)
原作は、原作者の代表作『鋼の錬金術師』のように、重いテーマ・現実を、時に誇張・デフォルメされたギャグを交えながら、原作者独特のスピード感・リズム感で描き出しています。
原作に比べると映画は淡々と進みます。時に原作にあるギャグが入りますが、基本淡々と。
例えば、主人公・八軒が初めてばんえい競馬を観る時のばんえい競馬は漫画の方が迫力があります。(漫画では、主人公が初めて生き物の力強さに触れる場面としての躍動感が半端ない)
キャストも基本よくキャスティングしたなと思います。特に南九条役の黒木さんは後半ばんえい競馬の場面ハマってました。タマ子はどなたが演じていらっしゃるのでしょうね。ぴったりです。
反面、駒場役の市川君は駒場ほど目力はない。でもだからこそ、等身大の高校生として現実感が出ていました。獅童さん演じる中村先生も漫画より普通の人間として描かれていました。だからこそ、獅童さん演じる中村先生が言う「あいつなら…」という言葉にじーんと来ました。
より地に足付いた現実感溢れる映画になったと思います。
主人公・八軒目線で描かれている物語なので青春映画と言ってしまえばそれまでなんだけど、命をはじめ生きるってことに改めて気付かせてくれる映画かな。そういう意味では文部科学省のお墨付きで全国の小学校~大学等で上映してほしい。なんて書くと説教臭い道徳的な話に見えそうですが、肩の力を抜いて楽しめる映画です。
命の繋がりを忘れてしまった人、いろいろ背負っていてへたれそうになっている人、自分の力で成功したと思っている人に特に観ていただきたい映画です。
原作には他にもエピソードたくさんあるので、ぜひ、原作をご鑑賞ください。
大蝦夷農業高校
舞台は北海道帯広農業高校がモデルという大蝦夷農業高校。
数多ある甘ったるい青春ものとは一線を画す食用動物の飼育というシビアなテーマを扱いながら子供たちが逞しく成長してゆく様を描いた秀作。
都会の若者が観る想定なのか、主人公を通じて得る疑似体験の数々も感慨深い。
食用になることを宿命づけられた鶏や子豚の飼育、役目を終えれば処分されてしまう牛や馬、ややもすれば感情的な安っぽい悲劇の学園ものになっても不思議でないのだが若者たちは悩みながらも現実を受け止める、主人公がヒロインに惹かれるきっかけも広瀬アリスちゃんの胸チラだったり若者の本音が垣間見られる演出も面白い。
「将来の夢は無いけど、それは何にでもなれると言うことかもしれない・・」など淡々としたセリフの中にある重みなど、脚本・監督の吉田恵輔氏の巧みさに脱帽、ナチュラルに描いてこそ通じるものが生まれます。
キャスティングもバラエティ豊か、故・上島竜兵さんが校長先生、ドタバタギャグ以外の一面を観ることが出来、良かったです、改めてご冥福を、お祈りいたします。
ラストのゆずの主題歌も余韻に浸るにはうってつけ、ベタではありますが良くできた青春映画でした。
逃げるのは悪いことじゃない
Amazon Prime Videoで鑑賞。
原作マンガは第3巻まで既読。
高校受験に挫折した主人公が、農業高校の仲間たちと共に命と食を学び、酪農の抱える現実に打ちのめされながらも、目標を見出そうとする様を描いた青春ドラマ。
悩む八軒勇吾に先生が掛けた言葉―「逃げるのは悪いことじゃない。逃げた先で出会ったものは、そんな悪いもんじゃなかっただろ?」。すごく心に沁みて来ました。
逃げると云うと一見マイナスなイメージだけど、戦略的撤退と云う言葉もあるし、一旦その場から離れることで心が切り替わり、返って良い効果を齎すのかも。
八軒が両親にちゃんと向き合うことを決意した様に、逃げることで強くなれたりする場合もあるのではないかな、と…。決して悪い面ばかりじゃないなと思いました。
[余談]
岸井ゆきのがとてつもない端役で出演していて驚きました。
※修正(2024/04/07)
原作は読んだことはないだが、映画としてはよかったと思う。 酪農の厳...
原作は読んだことはないだが、映画としてはよかったと思う。
酪農の厳しさや現実もしっかりと描かれていたし、文化祭でみんなで力を合わせる感じもよかった。
原作も読んでみたいと思った。
特に目標もなく、受験戦争から逃げるような形で農業高校に進学。 馬術...
特に目標もなく、受験戦争から逃げるような形で農業高校に進学。
馬術部に入部したのも広瀬アリスのおっぱいにつられて、という有様の主人公。
しかし、実習を通して酪農の厳しさ、命の尊さに触れていくという、文科省推薦のような映画だと思った。
命の大切さ 重さ
この映画を観ると本当に命の重みと有難さを再認識させられます
焼肉を楽しく美味しく食べれるのは牛や豚、鳥、それを育ててくださる人達のお陰
食べ残したりするの辞めよう....意識してこっと....
ありがとう
踏み込んだ描写の多さには感心出来る
学力競争に嫌気が差し農業高校に入学した八軒。しかし、その生活は八軒が思うよりも遥かに過酷で…。
同名漫画の実写化作品。物語の起伏がイマイチで少しダレてしまったように感じたが、屠殺の過程を原作よりも踏み込んだ描写が多く色々と考える機会をくれる作品でした。
原作に忠実で好感が持てる
私は原作のファンで、原作は全巻揃えてアニメも全話視聴済みです。
ストーリーとしては八軒が入学して学校の文化祭でばんえい競馬をするところまで。かなり駆け足にストーリーが進んだ部分はありますが、概ね原作通り。
・・・・・・・・・・・・・・・
札幌の有名私立中学校から落ちこぼれ、学歴主義の父親から逃げるように全寮制の酪農高校に進学した主人公の八軒勇吾。やりたいことも無く将来への不安を抱えていた彼が仲間たちや動物との交流を通じて自分を見つめなおし、前へ進む姿を描いた青春映画。
・・・・・・・・・・・・・・・・
最近売れっ子のジャニーズアイドル中島健人くんが主人公の八軒を演じ、ヒロインの御影アキをバラエティ番組でも人気急上昇中の広瀬アリスさんが演じます。
最初はイケメンアイドルの中島健人くんが冴えない主人公を演じるということで不安があったのですが、実際見てみると意外にも違和感が無く、演技も自然で非常に良かったです。
ただ、ヒロインを演じた広瀬アリスは完全にキャスティングミスです。以前劇場版「氷菓」をレビューした時も同じことを書きました。広瀬アリスさんは非常に大人っぽい魅力的な女優さんですので、高校一年生の女の子を演じるには正直厳しいです。どうしてもコスプレのような感じに見えてしまいます。髪も短くして役になりきっていたのは評価しますが、それでもやっぱり高校一年生にはどうしても見えません。とは言え、制服のシーンはほとんど無く、登場シーンのほとんどは私服やジャージのシーンが多かったこともあり、「氷菓」ほどコスプレ感があるシーンが少なかったのでまだ見てられました。
【爽やかな青春酪農映画。吉田恵輔監督、頑張ったなあ。】
だって、あれだけ面白き漫画の実写化って、断らない?
それにしても、漫画はいつ完結するのか?というか、新刊はいつでるの?(2019年5月19日現在)
(2020年漸く完結しましたね。)
全95件中、1~20件目を表示