「オスカーノミネートおめでとう!ポスターやタイトルからは信じられないような見事な作品だ!」キューティー&ボクサー Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
オスカーノミネートおめでとう!ポスターやタイトルからは信じられないような見事な作品だ!
アカデミー賞の候補作が発表になり、本作がドキュメンタリー長編部門で候補作品としてエントリーしたと知り、本当に嬉しい!
候補作に選定される前に本作を観て気に入った自分には、この作品がノミネートされた事は自分の事の様に嬉しいニュースであった。
昨年のお正月はキアヌ・リーブスが製作&ナビゲートする「サイドバイサイド」と言う面白くて映画フリークには興味深くてたまらない作品で、幸先の良い年明けを迎えた。
今年は「キューティー&ボクサー」と言うメチャパワフルな人物を描き出した作品を観て元気に年が明けられた事が物凄く嬉しかった!
この映画は、NY在住40年に及ぶ、篠原有司男と言う現代アート作家とその妻、乃り子に密着して、激動の40年間の作家活動の足跡を焙り出していく。
しかし、そうは言っても本作は40年間彼らの生活を密着取材をしていた訳ではないけれども、そこは、映画のマジックで、巧く彼らの過去の生活ぶりを、アーティストならではの楽しい展開で描き出してくれる点も魅力的だった。
更に、このウシオと言う類い稀なるアーティストの魅力を余す処なく見事に映し出していると言う点は言うまでもない事だが、被写体のキャラクターそのものを一つのアート作品として表現出来た事は、ドキュメンタリー作品として見事な素晴らしい作品だと思う。
ファーストシーンはウシオの80歳の誕生日からスタートするのだが、このウシオが半端じゃなくパワフルで、岡本太郎を10人纏めて一人にしたような、情熱の塊、芸術は爆発だ!と言う表現こそしていないが、彼の生き様こそが、完全に爆発、水爆のようなパワーで観客の心に豪快なパンチを浴びせて来るのだ。
今迄、日本で観る機会の多いドキュメンタリー作品と言えば、社会の問題点を焙り出し、社会の矛盾に抗議する様な、社会的なメーッセージ性を帯びた作品ばかりが目立っていたが、本作のように、純粋に、アーティストと言う個人の生活を魅力的に描き出しているのは観ていて非常に気持ちが晴れやかになる。
それはまるで、その昔、TV東京で、「人に歴史あり」と言う素晴らしいドキュメンタリー番組を放映していたが、それ以来ドキュメンタリー作品で、楽しい作品とか、嬉しい魅力に溢れている作品に出会う事は殆んど無かった。
本作の様に観る者を幸せにし、勇気と希望を持って、自己の人生を生きる事、じぶんの未来を信じて生きる事の素晴らしさをこの夫妻の生き様を通して見事に描き出してくれた本作は、実にチャーミングな作品だった。
しかし、何だかこのタイトルでは、ピンと来なかったので、損をしている気がしなくもない。
昨年は「シュガーマン」「ビル・カニンガム&NY」と言う作品にも出会う事が出来た。
事実は小説より奇なりと言うように、人間の生き様、人生模様には、他人に希望や、勇気そして、何よりも、生きる事の素晴らしさを伝える素晴らしいパワーがある。
ドラマも良いけれども、他人の人生を垣間見る事で、人として学び成長するエネルギーを充電出来る、ドキュメンタリーを観る機会が増えたなら、人生もっともっと、2倍も3倍も楽しくなる事だろう!