「チャイナ・ノワールの世界と愛に生きる」ラスト・シャンハイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
チャイナ・ノワールの世界と愛に生きる
正確には中国映画なんだけど、こりゃあもう立派な香港ノワールの世界!
アジアン・ノワール、年代モノ、暗黒街、野心、ロマン、漢…これらのワードに引っ掛かる方は、見て絶対損ナシ!
貧しい育ちから、やがて上海の裏社会でトップにまでなる男。
1910年代~40年代の激動の時代、戦争、運命、愛に翻弄されながら…。
まずはこの、アジアン・ノワールのムードが堪らない。
のし上がっていく主人公は、さながら『ゴッドファーザー』。
漢たちが皆、渋くてカッコイイ。
ノワール、マフィア・ムービーの醍醐味たっぷり。
実は、もっとバリバリの犯罪活劇かと思いきや、大河ロマン。
なかなか骨太の内容と、涙誘う愛のドラマであった…。
上海裏社会でトップになるも、忍び寄る戦争…。
いくらチャイニーズ・マフィアとは言え、戦争の圧力の前に…。
しかし、そんな中でも、自らを貫き通す主人公。
この時代の中国の戦争の敵と言えば、言うまでもなく日本。
日本が鬼畜のように悪く描かれるのは別にイイ。
ただ、せっかく倉田保昭氏も出演していながら、日本人も中国語だった事だけが如何ともし難い…。
話の中枢は、出会いと別れを繰り返すダーチーとジーチウの愛のドラマだろう。
若かりし頃に出会い、心惹かれ合った二人。
結ばれてもおかしくないくらい運命的な二人なのに、何かがそれを許さない。
やがてダーチーは上海裏社会のトップに、ジーチウは京劇のトップ女優に。
お互いにパートナーが出来てからも、出会いと別れを繰り返す。
心から惹かれ合いながら…。
やっと二人が結ばれたのは…。
中年期のダーチーに、チョウ・ユンファ。このノワールの世界に帰ってきたとでも言うべき、さすがの存在感。
裏社会の黒幕に、サモ・ハン。
意外にも初共演の二人。80年~90年代の中国/香港映画好きには、二人の初共演は堪らないだろう。
スローモーション、夜の雨の中や教会での銃撃シーンは、『男たちの挽歌』を彷彿。映像センス的にも悪くない。
日本軍による上海襲撃、爆破シーンなど、かなりの大掛かりで圧倒される。
また、あるシーンなんか確実に『カサブランカ』へのオマージュ。心憎い演出に思わずニヤリとさせられた。
醍醐味とムードたっぷりのノワールの世界。
涙ナシには見られない愛のドラマ。
面白味やオマージュ。
これら全てに酔いしれる。