「せめて一言。」父の秘密 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
せめて一言。
タイトルの意味が最後に分かるが、それをどう捉えるべきか、
なまじどんなホラー映画よりも戦慄が走る作品。
日本の学校でも減らないいじめによる自死が、どんな傾向の
家庭で起こるかを暗示する部分があり、リアル性に於いては
嘔吐したくなるほどの酷さを呈している。なによりの悲劇は、
母親が事故で亡くなったことに起因する父娘の一方通行の愛。
互いを思い遣るばかりに自身の悩みを打ち明けられず、泥沼
に嵌って抜けられなくなってから事態は表面化する。もう遅い、
常に描かれるのはこうなってからの悲劇に他ならないのに
さらに今作は怒号のラストまで用意している。いいのか、これで。
私的にあれだけのリンチを受けながら耐えてきた娘に喝采だが、
なぜ一言、どうして一言、父親に自分の心意を伝えなかったか。
「ある視点」部門グランプリ作品だが、視点は確かにブレてない。
しかし観る者の感情は行き着く場を失う。
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