「痛くない」ペインレス かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
痛くない
10歳前後の少女が火だるまになるという衝撃的なシーンで幕開けする本作は、無痛症を扱ったスリラー映画です。
残酷描写が苦手な方には一切理解されない導入からして、
偏向した鬼畜映画の典型的な作品かな
と、思ったのですが、そんな予想はアッサリと裏切られてしまいました。
本作は、無痛症という稀有なネタを使っておきながら、第二次大戦前後の内戦で揺れたスペインを描き込んでゆく、という実に美味しい仕掛けが施された作品だったんです。
癌を告知された男の物語と、収容された無痛症児たちの物語が平行して描かれて、一つに収束してゆくという、ありがちな構成なんですが、時代に翻弄された収容施設の顛末が物凄い!
監禁施設とはいえ、元々は病院だった場所が、時代の波に呑まれ、あっという間に強制収容所、つまり刑務所になってしまうんです。
支配層もコミュニスト、ファシスト、ドイツ兵、ナショナリスト、と順を追って代わって行きます。
国や大人を取り巻く環境は目まぐるしく変化しますが、監禁された子供たちには閉塞された空間だけが真実です。
それでも、戦争という現実の余波は、確実に子供たちをも呑み込み、非情にも彼等を追い込んで行きます。
彼等に安息が与えられる事など全くないのです。
子供だろうと演出面で容赦しないスペイン映画ならではでした。
ただ、この映画、良いネタを扱っている割には、終盤の展開が強引な点と、物語が都合よく纏まり始める点は、頂けません。
少々、駆け足気味にも感じてしまう終盤の種明かしは、人によっては、ドッ白けの展開になってしまう恐れが充分にアリでした。
あくまでもスペイン映画が好きで、無痛症児が成人になっても生きていられる(大抵は成人前に死亡)という嘘を無視できる人専用映画かもしれません。