「淡々と」僕が星になるまえに huruhataさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々と
わかっている下り坂のストーリー、何となくつくりもののような運び、少なからぬ未整理のあれこれ…この映画が完璧な出来かと問われれば、躊躇なく首肯は難しいものの。
Benedict、殊にその声のフリークならば、しょっぱなの台詞にノックアウト必至です。そうでなくても、緩慢に流れてゆく物語の終盤、彼演じるジェイムスが三人の友人たちに切々と訴え懇願する一連の台詞とそのトーンは、聴く者に永い余韻を残す、さすがの響きです。
逝くものの旅を追いかけるつくりではあれ、結局、逝くことそれ自体をこそ、生きることの最後のかたちにしようとする主人公の思いを、彼に叱咤される道中を経た三人(彼らとて人生を妥協と惑いと諦めに支配され始めている'半オトナ'たちであり)がそれぞれの仕方で受け止める姿のラストシーン。そしてまた響く、しずかな、深い、彼のモノローグ。
原題の“Third Star”はネバーランドへの道標である「二番めの星」を言い間違えて、とのことですが、第三惑星である地球のこととも、また、全編を通じたサイドキャラクターの顔ぶれや、ややつたないとも思える暗喩からは“星の王子さま”とのつながりもうっすらと思わせるものでもあります。敢えてファンタジー調なのは主人公の夢も絡めてのことなのかも、ですが、それがさらに邦題になると甘すぎて個人的には些か「…」ではあります。
随所にあらわれる生きものたちと、それを支える空と海と光と、闇。人がいろんなものを捨てて、ものから解放されて、最後に寄り添いたいのは、そしてその中に溶けていきたいのは、やはりそういうものでしかないと感じさせられた部分です。ジェイムスの'... sea takes me' のラインこそ、この作品で私が最も納得できた瞬間でした。
いろんな粗削りはあっても、これからも何度も、ふとまた観たくなる作品がまたひとつ増えた気がします。友だちがひとり増えたみたいな。