「何気に深めかな そして隠れテーマは人間社会のことかも」MONSTERZ モンスターズ yoshikunさんの映画レビュー(感想・評価)
何気に深めかな そして隠れテーマは人間社会のことかも
全ての人間を操れる者と唯一操られない者の対決がベースだが、ごく一部の支配する者がいつの間にか思い通りに世の中を動かしており、主体的に動いていても、支配されている事に気づかない。。
人間社会の支配構造というべきか…。
そんなテーマを暗示しているようにも感じた。
全く操れない者を極度に恐れて抹殺しようとするのは、いわば防衛本能。
防衛本能が働くのと同時に相手への深い興味があり、あれほどストーキングするのだ。
通常の正義感を持つ人間という意味で終一扮する山田隆之に比べると、藤原竜也は感情移入はしにくい。
しかし人間らしいのは、もしかしたら藤原の方かもしれない。完全に逸脱した仲間外れのAKIRAの世界で彷徨っている自分を認めて分かってもらえる人が心のどこかで欲しかった!
前半の幼い2人の女の子のシーンも彼のモンスターとは言い難い人間らしさが出ている。
生まれてきてから何度も人を殺しているのに『もう誰も死なせない!』『お前、名前あるんじゃないか!』なんて言葉を掛けられる。
もう命でしか自分の罪を償う事は出来ないが、せめて自分の存在を公にしてもらえた幸せ。止めてもらえた幸せ。
それが最後の涙に込められていると言える。
その辺のメッセージを自分なりに読み取れればこの映画は前述の単なるサイキックホラーでは終わらない気もするがいかがだろう?
少し泣ける要素もある気がするのだが…。
演技に関しては、藤原竜也の鬼気迫る過剰な感情表現には恐れ入る。藁の盾の清丸、カイジなどクズな役が多いが、このままではこんな役しかこなくなるかもよw
とはいえ、役者の本質は彼のような主役でも脇役でも変幻自在の人生を生きられる事。
ドラマの主役しかできない王子様的な役者は、ここに気づかず完全に伸び悩んでしまっている。脇役やればいいのにw
どんな役でも違和感のない自然過ぎるほどの演技の山田隆之とは、少々タイプが違うが、そこで繰り広げられる演技合戦がこの映画の魅力であると言える。
石原さとみは、重要な役なのにちょっとかわいそうなくらい目立っていない。やや中途半端な感は否めないだろう。
彼女はキャスティングの段階で、興業的側面での考慮からだろう。
自分としては、メッセージ性の強い映画で、作り手もそれなりによく考えているようにも感じる映画だと思う。
人生とは死ぬまで生きること。