「このラストは本当に光輝くな!人間の底力、生きる事の美しさに胸を打つ」そこのみにて光輝く Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
このラストは本当に光輝くな!人間の底力、生きる事の美しさに胸を打つ
TVを普段見ない私は知らなかったのだが、池脇千鶴と綾野剛のカラミがTVのCMスポットで流れて話題になった映画らしい。
普段映画を余り観ない友人から、どんな映画か?と連絡が入った。
でもこの作品はそう言う事ばかりを気にして観るような親父には向かない作品だよな~と思って、どう薦めたら良いのか正直迷う作品でもあったのだ。
だがしかし、考えてみれば、あの北の外れと言っては申しわけないのだが、釧路などの北海道の地方都市と言うか、地方の街に住む人々の暮らしや、この映画の原作者の佐藤志が小説に描いていた時代は、高度成長から取り残された様な貧しさの色濃く残る地方色の濃い世界観と言うのは、やっぱり親父世代の、昭和ッ子、昭和生まれの人間か、実際に今も地方でしっかりと地に足を付けて、生れ故郷を大切に護り暮している人々でないと本当の意味でこの作品が描いているような世界観を理解するのは難しいのかも知れない。
私は昭和生まれでは有るけれど、東京近郊で育ち、旅行以外で地方都市を訪れる事は無い。地方の暮らし経験が無い私は、正直この映画が描きだす、仕事も思う様に無く、只真夏のけだるさのようなジリジリと身体と心を蝕んで行くような時間の流れは想像が着くけれども、本当の意味では理解出来ていない。
いつも時間に追われてはいるが、どんなに嫌な事であっても必ず継続しなくてはならない仕事と言うものは都会では無いのだ。
確かに転職は難しくても、自己の選択で人生の方向転換を図る事は何時でも出来るのだ。そう困難な状況ばかりではなく、自分の強い意志が新たな目標を達成させてくれる事が出来るのが、都市生活なのだからだ。
こう言う絶望だけが渦巻くような環境・・・その救いの無い日常に諦めて屍の様に生きる若い千夏。
そして仕事の失敗から立ち直れずに、自分の生きる場所を失い、迷路にはまった達夫。
この2人がお互いの中に、似た者を投影して、魅かれ合うのは自然な事だと思う。
だが、本当に辛い、話だ。
確かに素晴らしい作品だった。映像的にも自然の美しさや、お祭りで盛り上がる地方色の有る空気感が、画面から流れ出て来て見事だった。
そして千夏の弟拓児をあの「共喰い」で驚く様な芝居を見せてくれた菅田将暉が今回も
あっと驚くラストを飾る。
でもこの作品の一番の驚きは、女性監督、しかも未だ若い呉美保が撮った作品である事。
彼女は大林監督の作品からスタートしていると言う事は大林監督が北海道で映画製作の人材を育てている、その中から誕生した一人なのでしょう!益々今後が楽しみな監督です!