「戦時下の青春とは」陸軍登戸研究所 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦時下の青春とは
戦時中にスパイ養成所として設立された陸軍中野学校の名はよく知られていますが、それを支える様々な技術(殺人光線・化学兵器・風船爆弾・偽札製造)を開発する研究所が小田急沿線・現在の生田駅近くにあったなんて全く知りませんでした。本作は、当時の関係者の方々を訪ね、何が行われていたのかを記録した4時間に及ぶ長編ドキュメンタリーです。
まず、全く知らない事ばかりで本作で紹介されるお話一つ一つが大変面白い。日本のショボい攻撃の代名詞ともされる風船爆弾がこんな片田舎で設計されていたとは驚きです。また、風船を貼り合わせるのにコンニャクイモの糊を用いていた事は知っていましたが、それは物資が欠乏した当時の日本の窮余の策の象徴と思っていました。ところが、様々な材料を研究・実験した結果、風船を膨らませる水素を最も透過させ難い材料として選ばれたなんていうのは「へぇ~」です。
そして、最も驚いた事。本作でお話下さる当時の関係者の言葉の多くには戦争の暗さがかなり希薄なのです。「私の青春時代」とも言うべきノスタルジーや明るささえ感じます。自分たちの携わっている技術や兵器の先に人殺しがあるという想像が感じられません。でもそれは、酔っぱらって戦場での手柄話をしたがるジイサンの与太話とも違っています。でも、それは「戦争=辛い・暗い・悪」と思い込む現在の僕の見方に過ぎないのであって、それも当時の人々のリアリティとして留めておくべき事なのでしょう。そうした意味で貴重な記録でした。
これが、日本映画大学の講義の中から生まれて来たというのも嬉しいな。
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