「善人の仮面をかぶってサディスティックな復讐感情を暴発させるストレス発散バイオレンス映画w」イコライザー 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
善人の仮面をかぶってサディスティックな復讐感情を暴発させるストレス発散バイオレンス映画w
勧善懲悪、である。それは何がいいのか? 善が勝って悪が負け、この世に正義が行われるからだ。
さて、本作の主人公は「善人」なのだろうか? 一応、外見は穏やかだし、揉め事を起こしたり、他人を傷つけたりはしない。初めは来歴が不明だが、徐々に元CIAエージェントが過去の所業を悔いて、普通の生活を取り戻したいから、市井の人々に紛れているのだとわかってくる。
真面目に働く思いやりのある人間で、同僚には資格試験の合格をサポートしたり、レストランで知り合った売春婦の身の上を真剣に案じてもいる。ここまでは「善人」だろう。
ところが、善人豹変すw
同僚の母親が営む飲食店が警官たちに強請られていたことを知った彼は、突然警官をボコボコにして、カネを返してこい、と命じる。ああ、強いね。正義の使者だねえ。
そして売春婦が雇い主から酷い目に遭っていると知った彼は、今度は事務所に押しかけ、そこのギャング連中5、6人をあっという間に殺してしまう。しかもかなり残忍な方法で。
これは…もはや正義じゃないだろう。何というか、サディスティックな復讐感情をぶちまけただけではないか。
その後も本作ではたくさんの人が殺されていくのだが、主人公の殺し方が最も悪辣で…しかし、快感の度合いは高いのであるw
とすると本作はもはや「勧善懲悪映画」とは言い難い。善人の仮面をかぶってサディスティックな復讐感情を暴発させるストレス発散バイオレンス映画に他ならないだろう。冷静に考えると、ほとんどの勧善懲悪モノにはこうしたストレス発散が付きまとっているのだが、本作はリアルな生活でストレスの溜まった観客を意識的にターゲットにしている点で、一歩先に踏み込んでいる。
本作は単純に、何も考えずに楽しめる。小生も思わずシリーズ3作を立て続けに観てしまった。だが、その後に何か嫌な澱のようなものが残り、それは自分の心身の疲労なのだと気付かされた。
勧善懲悪を求める心性には、ストレスが溜まっている。そんな疲れた時に見るには、最適な映画だが、そればかり観るのは如何なものか、と反省させられもするのだった。