「主人公は誰なのか?」トランス arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は誰なのか?
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冒頭の始まりからしても、ジェームズ・マカヴォイというキャスティングからしても、このストーリーの主人公は彼が演じるサイモンだと信じて疑わない観客が大半だろう。
これは“奪われた名画は何処に?”というサスペンスだと。
しかし、催眠療法の医師エリザベスがこの事件に関わってきた辺りから、疑問が生じ始める。
記憶を失くしたサイモンよりも彼女の言動の方が謎めいているからだ。
彼女の狙いは何なのか?
オスカー監督となっても、尚意欲的に新たな作品を手掛けるダニー・ボイルの姿勢は素晴らしいが、今作では些か観客を煙に巻き過ぎた、ミスリードが過ぎたように感じる。
真相をすべて彼女に語らせるのは、安易だし(二時間ドラマの崖っぷちのシーンを思い出す)、それまでの疑問がすべてが腑に落ちる気持ちよさよりも、バラバラのパズルを無理矢理嵌め込んだような割り切れなさの方が大きい。
ダニー・ボイルは監督デビュー作である『シャロウ・グレイブ』の後にこの脚本を受け取っていたそうだが、当時は映像化は難しいと撮影には至らなかったとのこと。
主役の交代(誰が主人公なのかというミスリード)というアイディア自体は面白いが、それをどう見せるかというハードルは高かったのかもしれない。
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