Miss ZOMBIEのレビュー・感想・評価
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飼育の手引き
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近所の子どもたちからは石を投げられ、青年たちにはナイフを刺されたりする沙羅。やがては男どもから慰み者とされる。こうしたイジメの構造はもはやゾンビ映画の範疇を超えている!どことなく感染症を患った人間、もしくは精神を病んだ患者のようにも思えてくる。もちろん死んだ人間なのだから脳の認知機能も著しく衰えているに違いない。そんなことまで考えてしまう前半。
健一を噛んで生き返らせてからはまた違ったテーマがあるように感じた。沙羅が徐々に人間だったことを思い出したり、健一によって母性を取り戻したり、そして禁断の肉を食い、人間を襲うに至る。決してパンデミックのパニックが起こるわけでもなく、医師の夫のみならず健一まで奪われたと憤る志津子の心理描写も面白い。
また、毎日飽きもせずタイル磨きに精を出す沙羅と使用人二人の作業状況が一向に進まないという対比も笑えるのだ。石を投げつける小学生や火に当たる青年たちも同じ。ストーリーが一気に動き、クライマックスではモノクロからカラーへと変化するのも面白い。
性の対象となったことが性感染症といった展開も予想したのに、全く外れてしまった。家に帰ってみると、男どもがゾンビ化していてもおかしくない。そして、母と息子の絆を直視した沙羅が自殺するという結末。人間味を取り戻していく過程は緩やかだったが、拳銃による自殺という最も人間味の溢れる行為が泣けてくる。
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