「レスリー・チャンの科白が記憶に残る」楽園の瑕 終極版 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
レスリー・チャンの科白が記憶に残る
‘94「楽園の瑕」のディレクターズカット版。今回見て分かったこと、20年前のオリジナルを観たときに感じたこと、それぞれに異なる。
クリストファー・ドイル独特のかすれた、荒い画で描かれる剣士たちの戦いのシーンが、スクリーンを覆い尽くす。しかし、物語の本筋は、切ない純愛の話である。
マギー・チャン、カリーナ・ラウ、ブリジット・リンと素晴らしい女優陣が出演しているにも関わらず、彼女たちは回想シーンにしか登場しない。このことで、男と女の地理的時間的距離がいかに大きなものかを感じさせられる。
出てくる男たちの間には、生きていくための金と命をやり取りする緊張感が漂う。しかし、お互いがこの孤独の中を生き抜いているという一点で共感を抱き、互いの臆病に気付いたときに友情らしきものが芽生える。
レスリー・チャンの「他人に拒絶されるのが怖いなら、自分から先に拒絶すればいい。」というセリフが頭から離れない。自ら命を絶ってしまった彼自身の言葉であるかのように思ってしまう。人を愛すれば愛するほどに、自らの弱さと向き合わなくてはならない。いかに自分が臆病で、相手からの拒絶を恐れているかを思い知らされる。
ここにいる男たちは、自分の弱さと戦いながらも、女への想いを貫き通す。誰かの手助けを受けることもなく、まるで砂漠で馬賊と戦うようにそれは孤独だ。
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