「ラーメンばっかり」今日子と修一の場合 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ラーメンばっかり
できれば“ケンちゃん(和音匠)の場合”も欲しいところだったけれど、安藤サクラと柄本佑という夫婦共演、しかも奥田瑛二の娘という家族の安心感があった。
今日子と修一という二人にはそれぞれの深くて悲しい物語があるわけだが、今日子は嫁ぎ先から追い出され、新たな人生を始めようとしたところで、同棲中のヒモみたいな男を刺してしまい、逆に修一は父親を殺してしまった罪を償い、更生しようとしているところ。そのターニングポイントとなるのが双方とも東日本大震災だったというすれ違いストーリー。
殺人についても二人とも違うものだったし、人生の波が下降に流れるのか、再生して上昇するかの違いもあった。今日子にとっては殺人というより過失致死のようだったが、徹とタケシと二つの名前を持つヒモに人間不信と家族が震災にあったという理由からか、死体を切り刻み硫化水素によって隠ぺいしようとさえするのだ。なぜだか事件にもならないという都会の片隅の出来事。自暴自棄だったのか、心神喪失だったのかはわからないが、心の闇は消えそうにない哀しさも感じられた。
一方で、町工場で働きながら更生し、母親までもが行方不明となっていた修一は、未来を見つめ大学受験を志す。応援したくなるような性格だったし、彼女も出来そうなのに敢えて孤独を選ぶところも心の闇があるためか・・・。途中は時系列もバラバラだし、ちょっと気を抜くと眠くなってしまいそうな内容ながら、そんな二人が出会いそうで出会わない最後は見事でした。
驚きだったのは、同じく殺人を犯して少年刑務所から町工場で働いていたケンイチ役の和音匠。志垣太郎の息子だということだが、ピアノの腕前も立派なもの。本人の演奏という珍しいシーンも印象に残りました。