「Another One Bites the Dust(負けて死ね)🪰!! 出オチみたいなネタで最後まで突き通すそのイマジネーションに、ぼくは敬意を表するッ!」マッキー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Another One Bites the Dust(負けて死ね)🪰!! 出オチみたいなネタで最後まで突き通すそのイマジネーションに、ぼくは敬意を表するッ!
愛する恋人を守るため、ハエに転生した男が自らを殺した憎っくき悪徳社長に復讐していく様を描いたアクション・コメディ。
監督/脚本は『マガディーラ 勇者転生』の、名匠S・S・ラージャマウリ。
『マガディーラ 勇者転生』(2009)で、過去と現在を繋ぐ壮絶なサンサーラ(輪廻)英雄譚を描いて見せたラージャマウリ。そんな彼が再び輪廻転生をモチーフにした物語を再び描いた。
今回、命を奪われた主人公が転生するのは勇者…ではなく、なんとハエッッ!!
ハエの主人公が繰り広げる壮大なロマンス&アクション。もうこのアイディアだけで100点!こんなイマジネーションに溢れた作品、滅多にお目にかかる事は出来ません!!
ハエが主人公の映画なんて聞くと、その内容はさぞかし馬鹿馬鹿しい子供向けなものなんだろうと、何も知らない人は思ってしまう事でしょう。しかし、そこは天才ラージャマウリ。このちっぽけなハエの復讐譚を、スリリングかつ感動的に描き出します。まさかクライマックスで泣かされるとは…。
はじめはただブンブン飛ぶことしか出来なかった主人公がトレーニングでどんどん強くなっていくという、まるで『ロッキー』(1976)のような激アツ展開まで用意されている。ハエがダンベルで修行するんですよ!そんな映画が存在しているなんて信じられますっ!?
一つ一つ丁寧に張られた伏線を回収していく様も見事。まさかマイクロアートというヒロインの趣味があんなふうに活きてくるとは思いもしなかった。
とにかく全編に渡って驚きと裏切りの連続。これぞ娯楽映画だっ!と太鼓判を押したい。
あえて苦言を呈するならば、生前の主人公の言動がちょっとストーカーっぽくてヤバみを感じる。インド映画らしい陽気さで誤魔化されるけど、ライトで部屋を照らしたり職場に通い詰めたりするのは普通にアウトな気がする。
それとVFXのクオリティが…。本作は約90分間CGで作られたハエが登場するのだが、こんなにも長時間VFXが使われたインド映画はこれが初めて。そのため、どうしても違和感を覚えざるを得ないシーンがままあり、プリビズじゃないかこれ?と首を捻りたくなるカットがあったりもする。『RRR』(2022)のようなハイクオリティCGを期待しているとガッカリしてしまうかも知れません。
何はともあれ。
コメディ、バトル、ロマンス、ミュージカル、サスペンス、そしてホラー。本作には映画の全てが詰まっている。なんか異常に血なまぐさいのもまた良い!
『トイ・ストーリー』(1995)のテーマ曲をサンプリングして使用していたり、『シャイニング』の名セリフ「I'm caming〜♪」をここぞという場面で言わせていたり、ラージャマウリの映画愛を感じさせるパロディ要素もあったりしてとにかく観ていて飽きない。改めてラージャマウリ監督の凄さを実感出来る見事な一本!
…日本配給版のランタイムは125分だが、どうやらオリジナル版は145分のようだ。日本公開にあたり短尺に編集されるというのは、一昔前のインド映画にはよくあった事なのだが、これは元々そんなに長い映画じゃないんだし、オリジナル版をそのまま上映してくれりゃ良かったのに。
『マガディーラ』や『バーフバリ』シリーズ(2015-)はその後に全長版が公開されたが、『マッキー』もノーカット版を公開してくんないすかね?