「様々な愛の形を知り、少年は大人になる」MUD マッド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
様々な愛の形を知り、少年は大人になる
アーカンソーの川辺に住む二人の少年、エリスとネック。ミシシッピ川に浮かぶ島の森の中で木に引っ掛かったボートを見つけ、隠れ家にしようとするが、先客が居た。二人は風変わりな男、マッドと密かに奇妙な交流を続けるが、マッドは脱獄犯だった…。
「テイク・シェルター」のジェフ・ニコルズ監督作。
アメリカ南部の田舎町の雰囲気がノスタルジックを醸し出し、少年の友情と成長、ほんの一時のサスペンスフルな冒険…。
あの日、あの時、あの場所で…かの名作を彷彿とさせる。
愛する女、ジュニパーの為に殺人を犯したマッド。
決して極悪人ではなく、むしろナイスガイ。
島に潜みながら、愛する女との再会を夢見る。
自身も年上の女性に想いを寄せるエリスは、マッドに共感を抱く。が…、
マッドのジュニパーへの愛は、ハッキリ言って報われない愛。それ故、無償の愛とも捉えられるが、どんな理由でも殺人を犯してしまったら狂気の愛でもある。(マッドの名はここから来てるのか…?)
そしてエリスもまた、愛の不条理を知る。
そんなエリスにマッドは愛を信じる事を教える。
様々な愛の形を目の当たりにし、少年は一歩、大人へと成長していく…。
監督がマッド役にマシュー・マコノヒーを想定していただけあって、これは彼のハマり役。
やさぐれ具合と憎めない好印象が絶妙にマッチ!
改めて、マコノヒーの演技力の高さを思い知らされる。
エリス役には、「ツリー・オブ・ライフ」でブラッド・ピットの息子を演じた、新星タイ・シェリダン。
実質彼が主役なので、恥じない繊細で素晴らしい演技を披露。
良作への出演続き、楽しみな逸材!
ジュニパーに、リース・ウィザースプーン。マッド曰わく、“最高の女”なのだが、正直好みが分かれる所…。久々にいい女にも見えたのだけれど…?
マッドの事を知り、川辺に独り住む謎の老人、サム・シェパードはさすがの存在感。
オスカー受賞、出演作が続々公開…今年はマシュー・マコノヒーyear。
その最たるは「ダラス・バイヤーズクラブ」だろうが、本作も捨てがたいほど見事!