「巨匠初の駄作」トゥ・ザ・ワンダー KOJIさんの映画レビュー(感想・評価)
巨匠初の駄作
「天国の日々」「シン・レッド・ライン」等の数々の名作を残し、ハリウッドで最も尊敬されているとも言われているテレンス・マリック監督の最新作。
マリック監督は個人的に一番好きなアメリカ人監督であって、彼の映画はすべて見ている。そしてすべて溺愛している。
彼の特徴である、この世の物とは思えない様な映像美、知的で難解でありながら、詩的で美しいナレーションや台詞。台詞や展開に頼らずにテーマを表現する見事な編集。神秘的で自然な演技を引き出す演出力。すべてにおいて神的存在であり、100年に一度出てくるかこないかぐらいの天才監督だ。
だがこの作品に関してはちょっと何かがおかしい。
まず編集が粗い。ものすごく粗い。編集のカットが異様に速過ぎて、気が散った。
そして映像が普通。奇麗なシーンはもの凄く奇麗だが、全体的にマリックらしさが出ていない。「ツリー・オブ・ライフ」の映像美と比べると、同じ監督とは思えないぐらい普通な映像。
演技に関してはさすがの演出力だと思ったが、今作のテーマである「愛」に関して、ちゃんと映像を通して表現できていない。
哲学の教授でもあるマリック監督は、哲学的なテーマを美しい映像と詩的なナレーションで表現し、決してシンプルな答えは与えないのが彼のスタイル。
だが今作に関しては、結構シンプルに答えが出ちゃっているのと、テーマ自体の表現がかなり浅い。
死ぬ程好きな監督なだけに、もの凄く残念だった。
「ツリー・オブ・ライフ」が彼のピークだったのだろうか。。。
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