「ひとりよがりの映像。」トゥ・ザ・ワンダー bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
ひとりよがりの映像。
テレンス・マリックの監督作品ということで、早々に前売り券を購入しました。
この監督の前回の作品「ツリー・オブ・ライフ」を観たとき、随分、ひとりよがりの映画を撮るようになったものだなあ、と嘆きにも似た感情が込み上げてきたのですが、今回の映画を観終わったときの方が、その感情が更により強く込み上げてきました。
全く、予備知識を持たずに臨みました。ストーリーですが、まるで判りませんでした。男と女が出てきて、あと牧師みたいな男が出てきます。登場人物はかなり少ないです。それにも拘わらず、ストーリーが判らなかったというのは、筋書きを示唆するような科白が殆どなかったからです。ただ、ひたすら二人の男女はじゃれ合っているのです。一体、いつまでじゃれ合っているんだよ、と多少、苛立ってくることすらありました。途中で女が取り乱す場面があって、その後、二人はうまくまとまるみたいなので、多分、この映画は、現代における愛の可能性の追求ということなのだろう、という具合に自分自信に言い聞かせました。現代における愛の可能性の追求ということなら、1960年代にミケランジェロ・アントニオー二がいくつか秀作を残しています。しかし、この映画はアントニオー二の映画を越えてはいません。余りにも独善的なのです。ときどき、意味不明の風景の映像が挿入されたりします。確かに、一つひとつの場面はそれなりに美しいのですが、それが一本の映画となると、一体、どういう事を訴えたいのか、私には見えてこないのです。好意的に解釈すれば、この監督は現在、過渡期にあるのだと思います。この映画の次の作品こそが、新しいテレンス・マリックの映画になるのだ、そう信じたいのです。この映画がこの監督の完成形であるとは思いたくありません。本当は☆ひとつにしたかったのですが、今後のテレンス・マリックが大きく化けることを願って☆二つにした次第です。