「ホコ×タテ対決回避が残念。」ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ホコ×タテ対決回避が残念。
本作は、ルパン三世と名探偵コナンという国民的キャラクター同士のコラボが話題を集め、視聴率19.5パーセントを記録した2009年のテレビスペシャルに次ぐ第2弾。今回は秘宝チェリーサファイアをめぐり、ルパンとコナンが対決を繰り広げるストーリー。
ルパン三世のファンである大人にも、名探偵コナンに憧れる子どもにも楽しめるというファミリー層にはぴったりの作品でしょう。
ただ前作や既存作品を踏まえた展開になっていて、冒頭のルパンがわざわざ怪盗キッドに変装してコナンと対峙するシーンは、青山剛昌ファンでないと分かりづらいと思います。やけにコナンがネタを奪われたとムキになっていましたからね。だからテレビSP版をDVDでレンタルして予習しておく方が、本作をより楽しめると思います。
本作の見どころは、両作品のおなじみのキャラクターがまんべんなく活躍することです。サブキャラ同志の思わぬ共演シーン(不二子が誰かと一緒に入浴とか)に、思わずニヤリとされることでしょう。
テレビSP版ではコナンベースだったのが、本作ではルパンベースに変わり、アクションが派手になり、ボリューム感たっぷりに仕上がっていました。やはり人気作品の合作者は安定したストーリーを目指した脚本づくりを目指すあまり、いいことづくめではなくなります。例えばルパン、コナンの両方のキャラクターを活躍させたい意図から、どうしても発生する事件を多くして見せ場を増やすことになって物語が複雑になりがちになってしまいます。
従ってテレビSP版では、『ルパン』の世界観に『コナン』の人物が登場するという趣向で『コナン』の人物が絞られ、本作は『コナン』の世界観に『ルパン』の人物が登場する本作では『ルパン』側の登場人物が絞られてしまいました。それでも前作では未登場だった少年探偵団や怪盗キッド、警察関係者など『コナン』劇場版のレギュラーおよび劇場版初登場の人物が数多く登場します。また、セリフはないものの、『ルパン』から歴代のゲストキャラクターのほか、『コナン』からは大滝警部や服部平次も登場していました。
本作の最大の不満点は、ルパン三世VS名探偵コナンでもほとんど対決しないこと。絶対に捕まらない怪盗と、どんな怪盗も明解答の推理で捕まえてしまうコナンが対峙したとき、一体どちらが勝つのかという『ホコ×タテ』的な興味にそそられてしまうのが本作の肝に当たります。しかし、それに答えを出してしまうのは、絶対のタブー。なので、二人はいつしか立場を乗り越えて、巨悪に向かって共闘するという展開に持っていかざるを得ないのかもしれません。そんな大団円を見せつけられてしまうとちょっとラストはガッカリしますよねぇ。
そして対決相手はルパンだけでなく、コナンは当然ルパン逮捕を巡って銭形警部ともライバル関係になるはずですが、たいして絡むことはありませんでした。
峰不二子と灰原哀のヒロイン対決は、「裏切りは女のアクセサリー」という不二子らしい名台詞を使って哀が不二子をギャフンと言わしめる掟破りなシーンがあり、ぜひご注目を。ルパンと不二子を加えた三人乗りで不二子のハーレーを乗り回してしまうという、華奢なキャラらしくない活躍も見せていました。
エンドロール後も後日談とそれぞれの作品の次回作の紹介シーンがあるので最後までご覧ください。
ところで、ルパン担当声優の栗田貫一が初日舞台挨拶で、「どんな夢の対決が見たいか」と尋ねられると、栗田は「『臨場』対『相棒』」を提案。その後、栗田が「おやおや、検視官さん、お元気ですか?」と「相棒」の杉下警部の物まねを披露すると、ゲスト出演した内野聖陽も負けじと自身の当たり役である「臨場」の倉石義男の口調で「俺のとは違うなあ~」と返答し、会場を笑いに包んだようです。
コナンとルパンが日テレで放送されていることもあって、この日司会を務めていた日本テレビの石田エレーヌアナは慌てた様子だったそうです。それに対して、栗田は「細かいことが気になるのが僕の悪い癖。」と杉下流に謝罪し、会場は爆笑。
これは「臨場」と「相棒」ファンにとって楽しいやり取りです。最近橋本監督は、「相棒」の演出も手掛けているので、ぜひ『臨場』と『相棒』が合体してほしいものです。