劇場公開日 1990年2月10日

「凄惨で不毛な戦争・・・今だからこそ観て欲しい」カジュアリティーズ おまつさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0凄惨で不毛な戦争・・・今だからこそ観て欲しい

2023年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 合衆国史上最大の汚点である「ベトナム戦争」。アメリカ人にとって我々の想像を絶する程のトラウマとなっているこのテーマを扱った映画について感想を述べるのは野暮かなと思いました。が、この映画から伝わるベトナム戦争の狂気は当時の私にも相当ショッキングでした。ウクライナ・ロシア戦争が勃発し一年が経とうとしている今、改めて観てもやはりインパクトが強く考えさせられてしまいました。凄惨で不毛な戦争の虚しさが身近に感じられる今こそこの映画を観て欲しいという思いを込めて、今更ながらレビューさせてもらった次第です。

 内容は観てそれぞれで感じ取ってもらうとして、個人的な感想です。私の親愛なるマイケル・J・フォックスがこのシリアスな役柄を見事に演じていることに感動。テレビドラマシリーズに始まりバックトゥザフューチャーに代表されるようにコメディーの第一人者であるにもかかわらず、一切笑いのないこの映画で全くの違和感を感じさず演じ切っている。さらに圧倒的だったのがショーン・ペンの人間の醜さを最低限まで引き出す迫真の演技。というか恐らく演技ではあの迫力だせないでしょうね。何かを超越した人です、この人は。
 そして「キャリー」「アンタッチャブル」「ミッションインポッシブル」などの数々のヒット作を送り込んだデ・パルマ監督がアメリカ人の触れて欲しくないタブーを取り扱ったその覚悟に感服。同時期に公開されたベトナムものでトム・クルーズ主演でオリバーストーン監督の「7月4日に生まれて」が大ヒットしてましたが、同じ題材をきれいごととして大衆に訴えかけたこの作品(当時の私にはそう思えた)と対照的だったように思います。

 恐らく興行的には大失敗で撮った人、戦争犯罪者の役でイメージを下げた演じた人、見たくないものを見せつけられた観る人の誰一人得しなかった映画ではないかと思います。でも、力強いメッセージを持った「これからも映画ってこうあって欲しいな」と思わせる作品でした。是非。

おまつ