「検閲が削ぎ落とせなかったもの」無法松の一生(1943) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
検閲が削ぎ落とせなかったもの
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"午前十時の映画祭12" で鑑賞(4Kデジタル修復版)。
"ウィール・オブ・フェイト" と同時上映。
本作の根本を成しているはずの松五郎の名セリフ―「私の心は汚い」を、戦時中に男女の恋愛を想起させる描写は御法度であると云う理由で削除させた軍部の検閲が憎い。
戦後、戦勝パレードをイメージさせるとして、宮川一夫氏がそのセンスと技量をフルに発揮して撮り上げた提灯行列のシーンをカットさせたGHQの判断も本当に許せない。
まさに戦争に翻弄された本作。自らフィルムに鋏を入れた稲垣浩監督の苦渋を想像すると心が痛いし、稲垣監督が雪辱を晴らした三船版を生涯観なかった宮川氏の心中を慮ると…
しかし、検閲が完全には削ぎ落とせなかったものが刻まれていました。それは阪東妻三郎の魅せる名演技です。
ぼんや奥さんへの優しさなど、心に沁みる素晴らしさ。だからこそ上記のセリフの場面の喪失が残念でなりません。
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