「猫のように飼われた家族」ねこにみかん odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
猫のように飼われた家族
「ねこにみかん」という諺の駄洒落のようなタイトル、猫とミカンが出てくる映画だろうとは想像できる、有田みかんの地元PR映画のようだし、家族とは何か問いなおすファミリードラマというふれこみなのでミカン農家のほのぼの映画を想像したがあまりにも常識とかけ離れた設定と演出に面食らってしまった。
そもそも結婚を控えたカップルが主人公なら二人を中心とした人生設計に夢を膨らませるべきだと思うのにいつまでも実家のゴタゴタに関わってうじうじするのは不自然です、フィアンセを紹介する為に一時帰省したようですがまるで実家に同居するような長逗留、旦那も若く職業不詳ですから生活していけるのか、そっちの方が気になりました。
劇中で猫が嘔吐しているシーンがある、そもそも猫は柑橘系の臭いが嫌いなので食べることはないが無理に食べさせると中毒を起こすらしい。この意味深なタイトルの真意は何なのだろう・・。
「まるで猫のような家族だ」という主人公のセリフがあるが3人の内縁の妻と子らの同居の様は猫の多頭飼いにも思えてくる。俗に、夫は妻子を養う義務があるという言い方があるが飼っている猫も一匹ではなく家族だったらシュールな対比になって面白かったろう。
企画から脚本、監督を担った戸田彬弘さん、自身の長編初監督作品、有田の地元ボランティアから資金や応援を得て制作したらしいが正直、有田の魅力は伝わりづらい、このプロットで支援者たちは納得できているのだろうか、戸田さんの口車に乗せられたのではないかと余計なお世話だが気になりました。
「万引き家族(2018)」のようなとんでもない設定で話題を集めた例もあるから要は作家性の問題で常識はずれが悪いわけではないでしょう、むしろ自由で多様な表現ができるのが映画の醍醐味でもあるのですから風変りは歓迎すべきなのかもしれません、ただ家族愛を伝えるのに適切だったかは疑問です。