「突撃! 隣(の星)の晩ごはん」ダークスカイズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
突撃! 隣(の星)の晩ごはん
アメリカ郊外の田舎町に暮らす一般家庭が、
宇宙人による誘拐の恐怖に晒される様を描いたホラー作。
監督は『レギオン』『プリースト』のスコット・スチュワート。
ごく普通の一般家庭が狙われる展開やラストでヨネスケよろしく
晩飯時に襲来される展開が『サイン』と比較されているようだが、
全体的な印象としては『フォース・カインド』に近い気がする。
とはいえ、ミニマムなレベルで宇宙人襲来を描いた作品となると
メジャーな公開作品では案外珍しいのかしら。
警報器に始まり、キッチン荒らし、動物の異変、子どもの異変、
そして直接的な接触といった具合に、日をを重ねるごとに
じわりじわりと手口が大胆になってくる感じが怖い。
ごく一般的な家庭が主人公で、しかもターゲットにされる理由が
特に存在しないという点も薄気味悪い。
鳥の群れが飛んでくるシーン、親しい人がいきなり忘我状態に
陥るシーン、そしてまるで電波に混じるノイズのように
一瞬で現れては消える“グレイ”の襲来シーン。
この辺りが映画のハイライトだが、あくまで現実味を崩さないよう
派手さやケレン味を抑えている辺りも悪くない。
J.K.シモンズ演じる宇宙人研究家も、このテの映画では珍しく
エキセントリックさがあまり無い普通のオジサンみたいな人。
最初から半分諦めてる感じが新しい。かも。
とまあ、とにかく宇宙人の恐怖を身近な存在として描こうと
腐心しているんだろうという点は評価できると思う。
けど日本人にとって『宇宙人の恐怖』というのはなかなか
身近な恐怖とは感じにくい気が。少なくとも僕はあんまり
ピンと来ない。幽霊話とかには死ぬほどビビるけど。
それに恐怖演出や語り口にそこまで冒険がある訳ではなく、
それこそよくある幽霊ホラーみたいな見せ方ばかりなのも残念。
これも現実味を出そうとして演出を抑えた副作用か、
はたまた単純にアイデアが出てこなかっただけか……。
そういや『ホラーじゃない!』というレビューが幾つか見られたが、
これもSFホラーという立派なホラージャンル作品だと思いますよ。
まあ『インシディアス』のスタッフ製作という宣伝のせいで
幽霊ホラーだと思い込んで鑑賞された方も多いだろうし、
上記の通り、一見すると幽霊ホラーみたいな見せ方だしねえ。
恐ろしい怨霊が出てくると期待してたところにあんなヒョロ長い
スペースヨネスケ襲来を見せられたら……確かにガッカリするかも。
最後のオチにしても「ずいぶん気の長い襲来だったんだね」
と思うくらいであまり驚きや戦慄は無かったかなあ。
まあ何光年も宇宙を旅してる方々なので、われわれ地球人とは
時間の感覚が違うんでしょうなあ。
我々もこう、ゆとりを持って生きたいものですなあハッハッハ。
……あ、はい、茶化してスミマセンでした。
総評。
怖い事は怖いが宇宙人を怖いと思わない自分にとっては
『画面を観ていられない』というほどではない。
恐怖描写や手法に斬新さがある訳でもないので、
最終的な印象としては『それなりの出来のホラー』ってとこに
落ち着いてしまっている感じ。
実録ホラーみたいなジャンルが好きな方はレンタル等でドーゾ。
〈2013.07.06鑑賞〉