劇場公開日 2014年4月19日

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「この程度で「反日映画」と騒ぐ連中がいるとは驚いた。」レイルウェイ 運命の旅路 コーヒービートさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この程度で「反日映画」と騒ぐ連中がいるとは驚いた。

2025年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

狭苦しい向こう三軒両隣りの世間話をせっせと映画化して、
恥も外聞もなく国際映画祭に出品している某国と違い、
イギリス国は某国が「世界はすでに忘れている。」と思い込んでいる
犯罪をいまだ告発する映画を作り続けている。

夏なお冷涼で曇り空が続くスコットランド、
初老を迎えた男が抱える心の傷とは・・・。

舞台はスコットランドとタイ、
過去と現在が交互に交差する。

画面の切り替えを考慮してか、熱帯のはずにも係らず
タイの風景の画像はスコットランド同様暗めのトーンが多い。

このため観客は違和感なく、場所・時間を一緒に切り替えられる。

映像は実に工夫されている。
トーンの統一ばかりでなく、
現在(設定は1980年ころ)のタイの田園風景に
案山子のように宿敵の若い日の姿が見えているなど、
画面切り替えの妙。
前半、さまざまにはりめぐらされた画像の伏線が
後半一挙に解き放たれる映像表現の妙。
実に計算されている。
「蓮實重彦先生ならばどう評価するだろうか。」と
思わずにはいられなかった。

誰も書かないだろうから書くが
主人公がタイを再訪した時に
タイの田舎町に流れていた曲、
絶対にディスコの名曲「怪僧ラスプーチン」のタイ語版です。
これで「現代」が1980年前後と観客は理解できる。

ラスト、モデルとなった二人が
共におそらく同時期の出征時に写されたであろう
奇妙に似た雰囲気の軍服に身を固めた
写真(そしてそれは遺影になっていたかもしれない)
が映し出されると、場内は静かな感動につつまれた。

休日の都心のミニシアターで観たが観客は20人程度か。
やはり「忘れたい」のでしょうね。
某国を今悩ませている「いじめ・パワハラ」同様
受けた側は「忘れる」はずはないのに。

コーヒービート