劇場公開日 2013年11月16日

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「知らなかったし、気付かなかった」くじけないで marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 知らなかったし、気付かなかった

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

癒される

カワイイ

柴田トヨさんについて、またその詩集についても、恥ずかしながらこれまで私は存じませんでした。また、本作について何の予備知識もなく何気なく鑑賞しました。
ですから、エンドロールを観るまで、実在のモデルがあって、その詩集を元に作られている映画であることを、私は知ませんでした。
知らなかった、というより、気付かなった、感じなかったのです。
これがとても残念に思うところで、本編の演出で、実在のモデルがあることを、先ずもってちゃんと感じさせて欲しかったです。と言いますのは、創作された人物か実在の人物かで、観方は変わってくるものだからです。
はっきり言いまして、本作のストーリーは平坦でドラマ性に欠けます。もちろん、複雑で劇的であれば良いというわけではありませんが、創作されたキャラクターとして観たならば、生涯を描くエピソードのどれもが凡庸で、もっと悪く言ってしまえば、一本の映画として、とりたてて描く必要があるのか、とさえ思うこともありました。
これを、実在の人物であることを意識できていたならば、少なくともこのように否定的に観ることはなかったと思います。
もしかしたら八千草薫さんが素敵過ぎることも(この場合悪い意味で)影響しているかもしれませんが、やはり映画の構成という面で、個人的には酷評せざるを得ません。

ともあれ、エンドロールで実在のトヨさんを知るに至り、あらためて本編を想えば、おそらくは柴田トヨさんのお人柄と詩の魅力を生かすことを考えた結果として、過剰な演出は控え淡々と穏やかに描いたのだろうと理解しました。平板であっても、人間の営みの、普遍的な美しさというものが確かにありました。

ただ、やはり(といってはなんですが)、映像表現を含め映画として、私は物足りなさを感じました。
本作で描かれるトヨさんの生涯、つまり追憶というものは、「詩」という明確なテーマあってこそのもので、詩のもつ優しさや強さ、その魅力を最大限に象徴するものであるはずです。言葉をなぞって淡々と描くのもいいですが、詩ですからね、もう少しエモーショナルな構成・演出があってもよかったのでは、と思いました。

marumero
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