「“ママ”の愛は怖ろしく、深い!」MAMA 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
“ママ”の愛は怖ろしく、深い!
精神を病んだ投資仲介会社経営者ジェフリーは妻と共同経営者を殺害、幼い二人の娘ヴィクトリアとリリーを連れて逃走。森の奥の小屋に辿り着き、そこで娘たちに手をかけようとした時、何者かに殺される。5年後、小屋で姉妹が発見され、ジェフリーの弟ルーカスとその恋人アナベルが引き取るが、不可解な現象が相次ぐ。姉妹は“それ”を“ママ”と呼んでいた…。
2013年初めの全米公開時から見たいと思っていた作品。
日本では一体いつ公開されるのかなと思っていたら、リリース前に限定公開のみ。ほとんど未公開のようなもの。
しかし、ひっそりと姿を消すには惜しい秀作ホラー!
ジャンル的にはオカルトの部類に入る。
が、根底にあるのは愛と哀しみのドラマ。
製作総指揮はギレルモ・デル・トロ。
彼が携わったダークファンタジーは切ない余韻が残るものが多い。
本作はホラーではあるがそれに変わりなく、「パンズ・ラビリンス」や「永遠のこどもたち」が好きな方にはオススメしたい。
勿論、ホラーとしても見応えあり。
じわじわ煽り、時折姿を見せる“ママ”にゾクッとさせられる。
以前見た「死霊館」同様、非常に好きなタイプのホラーだ。
主演はジェシカ・チャスティン。
「ツリー・オブ・ライフ」「ヘルプ」「ゼロ・ダーク・サーティ」など役によって雰囲気が変わるカメレオン女優の彼女、ロングのブロンドもしくは赤毛の印象が強いが、ケバいパンク風の黒髪ボブもまた魅力的。
序盤こそは控え目の出番だが、序盤以降、アナベルとヴィクトリア&リリー姉妹のドラマが軸に。
子供が苦手だったアナベルが、不器用に少しずつ情愛を育んでいく姿はドラマの核でもある。冷えたリリーの手に息を吹きかけるシーンは温かい。
ヴィクトリアとリリーを演じる二人の女の子も達者な演技。
昔、真偽不明の狼に育てられた少女の話があったが、見ていたらそれを思い出した。
どんな存在であろうと、育て、愛情を注いでくれるのは、“ママ”。特に、幼い子にとっては。
“ママ”も、間に入ろうとする輩に激しい憎悪を抱く。
“ママ”の愛は深い。深いが、独り善がりの欲でもある。
狂気にも似た愛のある“ママ”と、温もりという愛がある“ママ”。
全てが丸く収まった訳ではないラストも秀逸だった。