「白なのか、黒なのか…?」バーニー みんなが愛した殺人者 ねことまとさんの映画レビュー(感想・評価)
白なのか、黒なのか…?
ジャック・ブラックと言えばキョーレツなブラック・ギャグ俳優のイメージ。
とはいえ、私自身は彼の出ている作品だと『ナチョ・リブレ』しか見ていないのだけど。
そんな彼の出ているこちら、当然のようにブラックな笑いに満ちているのかと思いきや、思ってたのと違った。
このお話は、テキサスの片隅にあるカーセージという高齢者ばかりの田舎で起こった実話をもとにしている。
過去については語られていない、小太りな男、バーニー。
葬儀学をまなび、葬祭ディレクターと呼ばれる葬儀屋のセレモニー取り仕切りから納棺師の仕事、営業までこなす。
おまけに人柄もよく、気づかいや優しさにあふれ、舞台劇を観たり出演したりすることも大好きで、歌もうまい。
町の住人はインタビューでいかにバーニーが素晴らしい人物なのかを語る。
そんなカーセージの町にはおよそバーニーとは正反対の家族や住民からも嫌われる大金持ちの性悪なマージョリー夫人がいる。
夫人の旦那さんが亡くなったのを機会に、バーニーと仲良くなった夫人。
はじめこそ、バーニーによい影響を受けていたものの、いつしかバーニーを自分のそばから片時も離さず、使用人や世話係、パートナーのように扱いだす。
バーニーもバーニーで、夫人に莫大な財産の名義人にされながら、彼女の独占欲をいさめることなくしばらくは一緒に過ごしている。
…が、ある日彼は猟銃で彼女を突発的に殺害してしまう。
神様に自分はなんてことをしてしまったんだ!と言いながら、夫人の死体をガレージの冷凍庫に隠し、数ヶ月は夫人が生きているかのように装うバーニー。
町中から嫌われていただけに、けっこう長いこと夫人が実は死亡していてもうまく誤魔化せていたのに、
夫人の姿がずっと見えないことを不審に思った株の仲買人が、夫人を探しだして夫人の死体を見つけてしまう。
…コメディだと思っていたけれど、違ったと思い始めたのはこのあたりから。
相変わらず、住民のバーニーに対するコメントは続くのだけど、カーセージの検事がバーニーを有罪にすべく、あれこれしだすわけです。
カーセージではバーニーの人気が圧倒的なので、なんと、裁判所を違う町に変えてしまう!
陪審員もバーニーのことをよく知らないわけです。
バーニーを守ってくれるものがなく、
やたら器用だったり、舞台演劇に携わっているということ、葬儀ディレクターをしていることなんかもなんだか捉えようによってはすごーくバーニーがもしかしたら皆が言うようないい人ではないかもしれないと思えてくる。
(劇中はそんな説明ありませんが…そう私には思えました。)
見ている側も、はじめのバーニーへの好意的なイメージが揺らいでくるわけです。
これって、もし自分が陪審員だったらどうなんだろう?とちょっと怖くなりました。
人が人を裁くのに、客観性を重視するのか、予見としてある人柄を考慮するのか。
紙一重だなぁー…と。
飛躍するけれど、バーニーとマージョリーさんも正反対だからこそあんなに仲良くなれたのかもしれないし。
わからないもんです…。
お話的には裁判の決着もついて、エンドロールでは本物のバーニーやマージョリーの写真も出てきます。
本当に、この人が人を殺したの?
この人がそんなに性悪なの?
…といった感じの方でした。
バーニーが皆に好かれていたことは確かで、今でも彼は殺人などしていないと信じている人もいて、彼は有罪になるべきだったのかどうかとか個人個人で意見は分かれるでしょうけど答えはありません。
終始、インタビューを多用してたんたんと仕上げたのは観る側に思うところ、考える余地を残すためだったのかな?…と思います。
あんまり笑えなかったけど、コメディだと思って蓋を開けて見たらストレートにいろいろ考えられるいい内容でした。
しかし…ジャック・ブラックの歌声をここまで楽しめたのはよかった!