「緊張感のある演出」イノセント・ガーデン 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
緊張感のある演出
撮影や編集、演出が徹底した美意識に基づいて作られていることが感じられ、本来そういった趣味ではではないのだが、すばらしく高級なものを見ている感じがして気持ちがよかった。
主人公のインディアがすごく変わり者であり、その孤独さに共感を抱いてみていたのだが、最終的に狂人だったことが判明して残念だった。お母さんがとにかく嫌な人で、大丈夫かよと思っていたのだが、そうなると唯一まともな人間らしかったお父さんも怪しくなってくる。
途中まですごく面白かったのに、おじさんが精神病院出たてのキチガイだったことが分かってかなりがっかりした。そんな人物があんなにスマートに振る舞えるとは思えず、リアルじゃないと思った。もうちょっといいアイディアはなかったのだろうか。
冒頭で「自分で選ぶことをやめると生きるのが楽になる」というようなとてもいい事をモノローグで語っていて、それに対して選ぶことをやめることができないお母さん、彼女は女であることを持て余し、押しつぶされそうになっている感じすらする生々しい女だった。そんな図式がとてもよかった。
主人公がお父さんを亡くして悲しみをこらえていると思っていたら実はあんまりそいった人間味のない人物だったのかよく分からなくなってしまった。ヤンキーの同級生が殺されて動揺したり怯えているのかと思ったら、そういうのがないまぜになっていたのかもしれないけど、性的に興奮していたのも驚いた。
結末で、インディアは嬉々として警官を殺す。異常者としてそうせざるを得ない苦しみや悲しみなど全くないようで、すがすがしくはあるのだが、異常者としての慎みを持ってほしかった。
ちょっと残念なところはあったのだが、最後まで緊張感がとぎれず面白かった。ニコールと娘は全く血のつながりがありそうには見えなかった。