「圧倒的な映像美と音楽に心揺さぶられる」言の葉の庭 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的な映像美と音楽に心揺さぶられる
2023年末にU-NEXTを契約したので、過去作を観はじめた。平日でも観られる短編ないかなと考えてぱっと思いついたのがこの映画。
初見は、「君の名は」を映画館で観た後の2016年の夏頃。「君の名は」の映像に惹かれ、新海誠監督の作品をもっと観たいと思ったのがきっかけだった。
さて、もう7年以上前(映画自体は10年以上前に公開)の作品を再度鑑賞したのだが、やはり圧倒的な映像美には、ただただ「すごい」としか言いようがない。
背景は極めて写実的に描かれているが、それはリアリティを超えて芸術の域に達している。かつて東京に住み、新宿御苑にも行ったことがあるが、画は実物よりも写真よりも美しい。絵画を鑑賞しているような感覚に陥る。
当時は、その映像美、ラストシーンと秦基博の歌うエンディングテーマ曲「Rain」に感動したのだが、今回もそれは同じだった。誰かが、これは長い長いRainのMVなのだと言っていたのを記憶しているが、この美しい映像とRainを聞くだけでも観る価値のある映画だ。
しかし、この映画は単なるMVではない。新海監督は、登場人物のキャラクター設定と心理描写にも心血を注いでいるのだ。
15歳の男子高校生と27歳の女性教師の短い淡い恋の物語。よくありそうな設定(精神的に幼い高校生の叶わぬ恋)だが、本作の男子高校生・孝雄は精神的にとても大人。対して女性教師・雪野は心は15歳のまま大人になりきれていない。このギャップと雨、そして現実からの逃避が2人を結びつける。
雪野は、ラストシーンで号泣しながら孝雄に告げる。「あの場所で、あなたに、救われていた」。深く深く内に籠もり、身動きできなくなっていた自分を救ってくれたのは孝雄だったと告げるのだ。客観的に言って雪野は弱いしずるい。孝雄が叫んだように、好意に甘えていたとも言える。でも、その自分の弱さやずるさを告白した彼女は、この瞬間やっと大人になれたのではないかと思った。
改めて鑑賞して、このラストシーンに心動かされた理由がなんとなく自分のなかでストンと腑に落ちた感がした。恋愛成就ではないが、2人の心が通い合って対等になった瞬間だ。
これからも「Rain」を聞くとこの映画のことを思い出すだろう。映像と音楽が一つになって観る者の心揺さぶる作品。
>sow_miyaさん
共感とコメントありがとうございます!
はい、あのシーンは非常に印象的なシーンですね。二人は真顔ですが、観ている方は少しドキッとする場面でした(笑)