「新海クオリティ ソノ3」言の葉の庭 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
新海クオリティ ソノ3
3年前の作品
グッと上映日が近づいて、多分、この作品がこの監督を世間に知らしめたのだろうというネット上の評。自分は全然知らなかったのは単なる不勉強以外の何ものでもない・・・
以前の作品とは違って、雨のシーンを多用し、映像にしっとりとした湿り気を漂わせて益々大人向けの演出を帯びている。
主人公の男子高校生と謎の女性が新宿御苑の東屋で偶然知り合う。何だか益々フランス映画のイメージが濃くなってきたような・・・
男子は子供から大人へと変化する成長期の真直中。その大人の女性の存在に憧れと恐れや反発を抱きながらも惹かれてゆく。この頃の男はとにかく年上女性に対する想いはとても強い。母親とは違うその存在にどう接すればよいのか、どの引き出しを引っ張り出しても対処が出てこないのだ。その想いを俯瞰で観るように、視点はニューヨークのセントラルパーク宜しく、大都会にぽっかりと緑で埋まる御苑から新高層ビル群や、NTTの時計台へと駆け上がる。
初めて逢ったの筈なのに概視感が否めないその女性は、去り際に和歌を諳んじる。重要なフリだ。まるで試すかのようなその和歌を留めながら、その女性の傷ついているであろう心に応えるかのように、少年は靴職人としての夢の一歩として、女性のために靴を作る決心をする。淡い恋心と共に・・・しかし実はその女性は少年が通っていた高校の国語教師であり、心ない生徒の執拗なイジメにより、職場放棄を余儀なくされ、精神的に追い詰められた状況であったのだ。全てに対し臆病になっている女性は、不意に告白をされるその少年を、しかし常識的に教師と学生という垣根からははみ出さずやんわりと拒絶する。しかし、飛び出していったその少年の気持ちを咀嚼していく内に本当の自分の気持ちを知り、裸足のまま少年を追いかける。非常階段での少年の詰りに、教師は少年を抱きしめる事でその愛情を受け止める。ここで、大江千里の『rain』がフィルイン。もう滂沱の涙しかでてこないこの演出は、流石、新海節だ。特に自分としては学生時代に聴き倒した大江千里のしかも、『rain』なんていうシングルカットされていないそんなに有名ではない曲が流れることにより感動を覚えた。残念ながら秦基博が歌っているバージョンなのが心許ないが・・・
多感な少年時代の大人への階段、そして現実の大人になってからの心の傷つき、その出会いが織りなす心の交差と咆吼を静かな雨が背景となって、物語を紡いでいく正に大人のアニメである。 雨が降ってくればあなたを引き留めることができるのに・・・ いや、降らなくても私は留まりますよ、あなたが引き留めてくれるならば・・・
コメント(&共感)
ありがとうございます。
製作から10年して口コミで広がり7年前に公開されて、
いまだに伝説の作品「言の葉の庭」なんですね。
今、改めていばねまさんのレビュー、読み返しました。
もう完璧に映画が再現されていますね。
コメント頂いてから、Amazonプライムで今、観ました。
47分なのであっという間に観れました。
ゆきの先生の絵、そんなに美形に描かれていませんね。
「RAIN」
大江千里の古い歌を秦基博がカバーしたものなのですか?
いばねまさんの学生時代の思い出と美しくリンクしていたのですね。
本当にこの映画のようにシンプルで美しい映画、稀ですね。
もう一度観れて、良かったです。
ありがとうございました。