「カウント4」ハル tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
カウント4
ハルをHaruと書かずに「HAL」と表記しているところから、てっきり「2001年宇宙の旅」のHALを意識しているのかと思い込み、「A.I.」や「アンドリューNDR114」のような「ロボットはどこまで人間に近付けるのか」「人工知能に心(魂)は宿るのか」ということが作品のテーマだと思っていた。
実際それは途中までそのとおりで、「ロボハル」が恋人を失ったショックで押し入れの中に引きこもってしまったくるみの心を癒そうと、ぶきっちょながら色々奮闘するシーンは微笑ましく、どんな形(ロボハルと一緒に暮らすのか、立ち直ったくるみがロボハルと別れて新たな途を歩み始めるのかなど)でハッピーエンドを迎えるのかを楽しみに観ていた。
しかしラストに至っての信じられないどんでん返しには、ただあっけにとられるしかなかった。ラストを知った後で思い返せば確かに料理を作るロボハルのレシピをスマホで検索する姿(人口知能の記憶データになければ無線LANで情報収集もできるはず)や、リュウに追われた二人が逃げる時、ロボハルが渡った木の足場をくるみが踏み抜く場面(ロボットの方が重いはず)など、それを匂わせるシーンも確かにあった。
ただこのドンデン返しは、それを加味しても反則すれすれだと思う(プロレス的に言えばカウント4まで入るような)。あまりの意外性に強く印象には残るが、その分私の期待していたテーマは無意味となってしまった。くるみを失ったショックで自らをロボットと思い込み、心を閉ざしてしまったハルに対するQ01(くるみに擬態している)の行動はまったく人間そのものであり、既に心を持っているからである。
言い方は悪いが一種の「なんちゃって、アニメ」であり、ラストの意外性だけでは、手放しで褒める気にはなれない。