カルテット!人生のオペラハウスのレビュー・感想・評価
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引退したミュージシャンばかりが暮らす老人ホーム、ビーチャムハウス。...
引退したミュージシャンばかりが暮らす老人ホーム、ビーチャムハウス。仲良しの3人組レジー、ウィルフ、シシーはかつてオペラで伝説のレコーディング『リゴレット』を残したことを誇りに静かに暮らしていた。そこに新しい入居者が入ってくるが、それは『リゴレット』録音時のカルテットの一員だった希代のソプラノ歌手、そしてリジーの元妻ジーンだった。リジーとジーンは激しく対立し、平和だったビーチャムハウスは一転して騒がしくなるが、ビーチャムハウス存続の資金調達の為に開かれるガラコンサートでカルテットの再演が提案され、4人は動揺するが・・・。
実際のミュージシャン達をキャスティングし、のどかで静かで微笑ましい理想的な老人ホームで繰り広げられる子供じみた愛憎からキュートな恋愛までをさりげなく綴ってみせたのは意外にもこれが初監督作のダスティン・ホフマン。キャストそれぞれのキャラを立てながら、老人ホームに訪れる出会いと別れをコンパクトかつ丁寧に纏めた手腕は見事。オペラを題材にしながらもあくまで軽快でポップなので老若男女誰でも楽しめる可愛らしい一品ですのでご夫婦でどうぞ。
徹子のカルテット。
今作の公開を前にD・ホフマンが来日したのは知っていたが、
先日、「徹子の部屋」にゲスト出演しているのに驚いた。
エ?なんで…ホフマンが徹子?と思ったらなるほど、
今作の原作が戯曲で、その日本版舞台に黒柳が出演したらしい。
(これにはホフマンもビックリ、喜んで褒めちぎっていた)
舞台を原作者が自ら脚色し、今回ホフマン監督で映画化された。
…なるほど、これだけの尺内で物語がおさまっている理由と、
どうもドラマとしての掘り下げが浅い理由が分かった(失礼!)
登場人物4人をメインにした、音楽家老人ホームでの出来事。
何でもこの「ビーチャム・ハウス」のモデル建物は実在しており、
1896年に、ヴェルディが私費を投じてミラノに創設したらしい。
すご~い!さすが音楽家はやることが違うわねぇ~(羨ましい)
今作に使われたロンドンのヘッソー・ハウスも素晴らしい建物で、
週末毎に結婚式に貸し出されているそうだ。
徹子~で、だから週末には機材を片づけて週明けに撮影再開、
というスケジュールだったことをホフマンが語っていた。
しかし何でまた監督デビューのホフマンが音楽映画を?と思った
ところ、彼は本来ジャズ・ピアニストになりたかった人だそうで、
アカデミー賞俳優にはなれたけど、音楽家にはなれなかった彼の
夢と欲望が入り混じった作品だったのかなと思う。
ともあれ、御歳75歳のホフマンが描くに相応しいほんわかとした
人生劇場といった感じ。彼がこなしてきた役柄を思えば(凄演多し)
こんな老後を送りたいものだよな、と思わせる一興に満ちている。
まぁそれでも、やはり音楽面では妥協しておらず…
嘗ての名音楽家たちを使い見事な演奏と歌唱を繰り広げている。
主演俳優たちの歌唱も聴きたかったが、すんなりタイムアップ^^;
俳優は演技、音楽家は演奏、監督は演出のみ、と徹底した役割。
それでも、あの生真面目一辺倒(だと評されていた)ホフマンが、
こんなに温かい映画を作ったことには感無量といったところ。
演出風景も、終始にこやか、(まぁあれだけの名優揃いならばね)
和気あいあいと楽しい撮影現場だったんじゃないかと思う。
物語自体は「いかにも舞台劇」といったシチュエーションが多く、
全体の掘り下げ方は甘い。あれだけ歳をとれば人間誰しもが
複雑な心境を抱えているものだが、それを99分で表現するのは
かなり難しいだろう。群像劇であり音楽劇であり老後恋愛劇の
側面もある今作は、そのあたりはサラッと流して演奏で〆る。
良くも悪くも、音楽を聴いて不機嫌になる人はまずいないので、
心地良く過ごせること請け合いだが、例えばオペラの講習会で
元々オペラという音楽は…とレジー(T・コートネイ)が説明する
オペラの講釈などは非常に興味深かった。
ラップやヒップホップに興じる若者との違いは、ほぼなかった。
日本の歌舞伎と同じで、元々庶民が気軽に楽しんでいたものが、
いつの間にか敷居の高い「芸術」になってしまった、ということか。
後半、G・ジョーンズが歌うアリア「トスカ」は身震いするほど◎
エンドで記される著名な音楽家たちの軌跡と共に、
大好きな音楽を死ぬまで続けられるように心から祈ってしまう。
(私も死ぬまで映画を観ていたいわ。こっちも年齢に関係ないから)
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