「美しい所作、ぎらつく目玉。ぎらつく野心。」利休にたずねよ お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
美しい所作、ぎらつく目玉。ぎらつく野心。
正直、私は茶の世界のことは門外漢なものですから、たぶん信長・秀吉も私と同じ気持ちを抱いたのであろうな、と、かすかな疎外感を抱きながら観ていました。
利休の所作はあくまでも美しく、しかし利休の心はあくまでも醜く、その描きわけが見事だったと思います。
千家3派が協力していますが、映画によって始祖の心のギラギラとした醜さを描くことになるとは、思ってもいなかったのではないでしょうか。
時代考証に関しても、浅さが目立ちます。
利休の思い人が朝鮮人だったというくだりなど、「取ってつけた感=嘘っぽさ」がアリアリとしており、ストーリーの面白さを半減させてしまっています。
朝鮮名物トウガラシ料理が彼女との重要なエピソードとなるわけですが、トウガラシが朝鮮に伝わったのは、誰でも知っているように、利休の死よりも、もっと後。
朝鮮発祥の食べ物どころか、伝来当初は「倭芥子」と朝鮮で呼ばれていたことでも分かるように、ポルトガルから日本を経て伝わった品物に過ぎません。
しかもその経緯ですが、秀吉の朝鮮征伐の時、加藤清正が凍傷予防薬として持ち込んだのが最初だったのです。
つまり、持ち込んだ当時は、食べ物という意識もなかったのです。
ああ。韓国人にとって不倶戴天の敵・加藤清正公が持ち込んだ品物だったとは……。
もう、ね。
時代考証メッチャクチャ。
わざわざ韓国人女優を出演させるために引っかき回した感がアリアリで、鼻白むばかりでした。
また黄金の茶室は利休が設計したもの。
その黄金の茶室を批判する利休って何?
つまり自分で自分の尻を蹴っ飛ばすお話でしょうか。
理解不能でした。
野心にギラつく心の動きを目玉の力によって表現し尽くし、美しい所作で茶を立てる海老蔵の演技力に対し、★4つ。