天使の分け前のレビュー・感想・評価
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ラストがハラハラ…
金なし職なし天敵にはつけ狙われて最低の街から抜け出すこともできない最低の男だが、愛するカミさんとベビーのために一計を案じるところから俄然面白くなってくる。
実はラストシーンが一番ハラハラしたよ。
天敵がいつ出てくるかって。
「天使の分け前」この一言を伝えたいがだけの映画。
だが、いいじゃないか。おバカでうだつの上がらないやんちゃ男の一世一代の奮闘記。
ウィスキーが飲みたくなったよ。
恩師への分け前。
行動の是非で問うなら、まったくけしからん映画ではある。
天使の分け前と言いながら、結局そうなるの?というお話。
しかしこれは良識を問う前に、分けちゃったら?という監督の
社会持論を明らかに謳い上げている作品である。
登場する若者達は(本人の素性もあろうが)働く場がない。
必然と悪の道に染まり、暴力に明け暮れ、社会活動に流れる。
もうそういう若者には、二度と更生の道は拓かれないものか。
物語にはそういう若者を見離す大人と見守る大人が登場する。
どちらのやり方が良いとか悪いとかではない。
ただこれから生きていくためには何としてでも自分の努力で
今の現状を打開しなくてはならない、その手助けをしている。
ウイスキーの魅力を愛好家のハリーから教えられたロビーは、
自身にその素質があることに気付く。何とかして職業にしたい
(あるいは金儲けしたい)ロビーだが、もちろんコネも金もない。
そこで奉仕活動仲間の悪友を取り込み、とある計画を立てる。
(ここでウイスキー作りに精を出すと思ったら、大間違い^^;)
今作で非常に面白いのはウイスキーの知られざる魅力だった。
自身は飲まないので味そのものの魅力はまったく分からないが、
熟成樽の中で年間2%蒸発する分を「天使の分け前」だという、
ずいぶん粋な表現だな♪と思って感心した。
笑うに笑えない現状が一気にドキドキさせるシーンへと代わり、
最後は想像通りのハートウォーミング路線へと持っていかれる。
少し前のK・ローチ作品にはまず笑いなどあり得なかったが、
二作前の「エリックを探して」なんかはかなり笑った記憶がある。
テーマは分け合うこと。助け合うこと。恩意は謝意で返すこと。
あと悪友たち!早く更生しなさいよ。
(どの国の若者も現状は厳しいねぇ。でもどこかにきっと道はある)
いろんな事が中途半端ですが、カッコイイとこはカッコイイ
どうしようもないチンピラの一発逆転ストーリー。
序盤は少年犯罪の裁判から始まり、ドラッグや暴行、窃盗の少年犯罪を強く匂わせる感じからスタートし、陰鬱でけだるい感じが強く、正直『だるい』映画と感じました。
ただ途中、ウィスキーの会でロビーが見事なテイスティングを見せてから、物語は一気にテンポを上げていきます。
モルト・ミル…100万ポンドを越える金額でやり取りされる、至宝のウィスキーをかっぱらい、売り払って金を得る…ところまでは想像通りのストーリーでしたが、タデウスとの交渉の始まりから、さらにテンポを上げてクライマックスへ。
『何本ある?』
『保存用、交換用、友人との試飲用』
『まさか支配人と?』
『勇気がない』
小気味の良いこのシーン最高にカッコ良かったです。
アルバートが失態を犯したあとのロビーの交渉から、モルト・ミルを1本で10万ポンドまで釣り上げつつ、『天使の分け前』を恩師に届けるラストはとっても痛快でした。
途中、スコットランドの山々もとっても素敵な景色でよかったですが、そこを旅するチンピラのケルトスカート×パーカーのルックスに唖然…
また、前半の安易な絶望感は後半とのコントラストなのかも知れませんが、ちょっと食傷気味でした。後半にはぱたっと止まる感じですし…
でも、後半のストーリーと『天使の分け前』というタイトルと、ロビーというキャラクターはとっても気に入りました!
ウィスキー文化の描かれ方が興味深い
スコッチウィスキーや、スコットランドの荒涼とした景色に憧れ
のある私にとって、本作でスクリーンに映される本場の蒸留所内
部やハイランドの景色は、それだけで及第点を与えられる。
本作を見るにあたり、労働者階級の若者が這い上がっていく姿が
描かれていると知ったときは、「トレインスポッティング」「リ
トル・ダンサー」で作品背景として取り上げられたような、現代
イギリスの矛盾についての描かれ方にも興味を持って臨んだ。
底辺からの脱出を貴重な銘酒を盗むことで果たすという、大筋と
その結末は賛否あると思う。だが、それは国情も文化も違う国の
事。私にどうこう云う話ではないと思う。
むしろ、本作で面白いのはウィスキーの描かれ方である。
テイスティングのフレーズをコケにする。飲み残しや痰壺かわり
のウィスキーを飲ませる。中身を入れ替えたウィスキーをオーク
ション落札者に賞賛させる。オークションの前日に怪しげな相談
を持ちかけられるのは、実在の蒸留所のマネージャー(その方は
俳優が演じているのか、本人役なのかはわからないが)である。
貴重な銘酒をまんまと盗まれるのは実在の蒸留所からである。
その一方で、テイスティングの権威として登場するのは、本物の
ウィスキーの権威であり、本物の蒸留所が実名で登場する。
普通に考えれば、コケにされる蒸留所は仮名だろう。スコッチの
描かれ方も、名声を壊さない程度に採り上げるところだろう。だ
が、そうしないところが面白い。歴史の荒波を潜り抜けてきたス
コットランドとスコッチウィスキーの、したたかでユーモアを大
切にする精神が見え隠れする。ブームの陰で、スコッチウィスキー
ーの味を知らないスコットランド人の若者が増えていることを、
本作を見て初めて知った。本作でスコッチウィスキーの若者離れ
が食い止められたとすれば、見事というほかはない。
観終わった後の後味もすっきりしていて、私も本作を観た後、無
性にスコッチが呑みたくなった。(呑んだのは余市蒸留所の原酒
だが・・・)
2013/6/23 川崎市アートセンター アルテリオ映像館
うな丼かと思ったら深川丼だった
6月4日、池袋シネリーブで鑑賞。
ケン・ローチ、大物監督…らしい。名前は聞いたことはあるが、1本も見たことがなかった。
評者は、ウイスキー好きなので、そんな世界も描かれていることにちと期待した。
どうしようもないヤクザものの主人公がウイスキー作りに触れて成長する物語。予告を見て、そんな「感動」作品だと思っていたが、中身はよくいえば、小粋なイギリス映画。ちょっとコメディータッチ入れてみました…という感じ。
期待した中身ではなかったこともあり、★は辛め。優待券で見ているので腹も立たない。腹も痛まない。
暇つぶし目的なので、時間返せとも思わない。
きっとシェイクスピアも驚きの作品だ、1杯飲飲まなくては、やりきれない映画
「ケス」69「レディバード・レディバード」94「大地と自由」95そして、「麦の穂をゆらす風」06など、多くの名作を制作してきたケン・ローチ監督。
彼の最新作「天使の分け前」は、ちょっと期待外れの作品だった。と言うよりは、正確には、私が勝手に期待を膨らませ過ぎていただけだったと言った方が正しいのだろうか?
社会の片隅で、懸命に生きる人々の姿を描く彼は、社会の矛盾や、理不尽なこの世界でも、何とか生真面目に生きようとする人々の苦悩と葛藤を描く事がテーマになる筈だ。
そんな彼が、今回はどうした事だろうか?
主人公の喧嘩早いロビーも、父親になる事で、今迄の無茶苦茶な心を入れ替えて、子供の為に更生すると言う感動的な話になる筈である。しかし、これでは単なる泥棒称賛映画である。
人生の出直しを、犯罪に手を染める事で、乗り越えようと企む若者を描く彼は、もう社会派映画監督としても詐欺であると、言わねばならない。
犯罪もばれなければ、万々歳!してやったりと言う事なのか?
もしかして、ケン・ローチは、急にコメディー映画監督に転向したのだろうか?
これも英国特有のブラックユーモアの、社会風刺の作品と言う物なのだろうか?
私は、石頭のバカと言われ様が、こう言う作品を評価出来ない。
邦画でも、人気ヒット作で、好評価だった「悪人」や「告白」もいくら世間が評価しても、犯罪者をはっきりと正面から悪いと言わない映画は絶対に評価出来ないでいる。
最近観た「ぼっちゃん」もそうだ。この世の中は矛盾だらけ、理不尽な事も多い。
人間の一生には1人や、2人は、殺したいと思う程、辛い思いをする事もある。しかし大方の庶民はそれでも、真面目に生きる事で、社会の秩序が保たれるのだ。そして人間が人間で有り、単なる動物と違う点も、理性を保って生きるところに、人間の価値が有る。
それは、現実的には、至難の業で大変な困難を伴う事であるからこそ、時に芸術作品は、そうした人間の辛さや、弱さを表現する事で、真っ当な庶民の怒りの感情を代弁しているのだ。しかしその、アーティストが犯罪者の生活を何の否定する事もなく描き、そこに至る葛藤も苦しみも描かないとなれば、これは3流コメディーだ。それ以下だ。
今年春に他界されたサッチャーは、鉄の女と言われ、一時期社会の底辺の人々を切り捨てた、格差社会を助長した政策を強行した政治家と評価された事も有ったが、彼女の政権以降英国では社会制度もしっかりとしているので、世界水準的に見比べれば、いくら失業率が高くても保証もその分手厚い国なので、決して庶民にとって棲み難い格差社会のみの国ではない。
しかし社会派と言われる人々は、社会政治や、世の中のシステムの矛盾を描こうとする余り、社会の総てを否定的に捉えようとする傾向が強くなる事もある。マスコミもアートの世界も、ニュートラルで、公平な目線で作品を作らなければ独り善がりに陥ってしまう。
個人的には、「ルート・アイリッシュ」と「セプテンバー11」など大好きな彼だけに残念だ!
人生、捨てたものではないですね。
イギリスのサッチャー元首相が亡くなったときに、元首相の経済政策が、持つ者と、持たざる者との格差が拡大させたとの評が全国各紙に掲載されていました。
本作品の主人公は、持たざる者の家庭に生まれ、そこから抜け出せる希望もなく、若くして、罪を犯し、服役しています。
しかし、新しい家族を持ち、理解のある保護司(イギリスでこう呼ぶかは分かりません。)に出会い、人生の目標を見つけます。この方法に、シャレが効いています。これから、主人公は、幸せな人生を送れるだろうか、いや、送って欲しいと思わせる作品です。
銀座テアトルシネマのクロージング作品です。本作をクロージング作品に選んだ東京テアトル社の英断に敬意を表します。
入魂一滴ではなく混入一滴
人生の大逆転を賭けた大一番というのが予想していたのと違った展開だったが、ジャンルが想像と違っていたというだけで、これはこれでおもしろい。
社会奉仕活動の指導者・ハリー以外、主要人物のほとんどが経験の浅い役者ばかりだが、それぞれのキャラの持ち味が出ていてキャスティングがいい。
とくにゲイリー・メイトランドが、ちょっとおバカなアルバート役で最初から最後まで突っ走る。
劇中、蒸溜所の見学がありスコッチ・ウイスキーの製造過程を見ることができるうえ、テイスティングの表現に使う独特の言い回しや樽の開け方など、なかなかに楽しいひとときを提供してくれる。おまけに実生活でもスコッチの権威であるチャーリー・マクリーンが堂に入った本物の仕草でテイスティングし、レア物のオークションの様子まで加えられる。スコッチ・ファンはもとより、酒好きには堪らない内容だ。
最初にも書いたが、問題の多かった青年がスコッチとの出会いから新たな人生を歩み出すといった、しごく真っ当な人間ドラマを期待したら見事に裏切られる。なかなかに一筋縄ではいかないずる賢い青年で楽しませてくれる。
物の価値観を自分の感性ではなく、ブランドと価格、そして他人や世間の風評で判断してしまう人の愚かさをチクリと刺してみせるあたり、なかなか風刺が効いている。
同情はできるけど、共感はできない
ウイスキーである必要が?というのが正直な感想。
映像は綺麗だし、音楽も素敵ですが、どうしてもストーリーに
もやっとするところがありました。
更正するチャンスをつかむ為とはいえ、結局やった事は犯罪だし、
他の樽のウイスキーを混ぜるなんて以ての外。
ウイスキーを作った人に失礼だし、そんな人が蒸留所で働くのが
ハッピーエンドなんて…。
主人公の天性の味覚を生かしてというのであれば、
もっと綺麗事な話で見たかった。
映画に“後味”を求める人には丁度いい作品
正直がっかりでした
やることすべてが上手く行ってばっかりの安直なストーリー
ケン・ローチには
『スウィート・シックスティーン』
のような
現実の厳しさを思い知らせてくれるような
作品を期待してたんだけど
安っぽい監督に成り下がってしまいましたね
若者の更正だの
人生の再生だのと謳い文句にしているけど
結局やってることは犯罪
…しかも大泥棒だし
蒸留所が見える丘で
主人公達が寝転がってるシーンは好きだけどね
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