劇場公開日 2013年4月13日

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「きっとシェイクスピアも驚きの作品だ、1杯飲飲まなくては、やりきれない映画」天使の分け前 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0きっとシェイクスピアも驚きの作品だ、1杯飲飲まなくては、やりきれない映画

2013年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

「ケス」69「レディバード・レディバード」94「大地と自由」95そして、「麦の穂をゆらす風」06など、多くの名作を制作してきたケン・ローチ監督。
彼の最新作「天使の分け前」は、ちょっと期待外れの作品だった。と言うよりは、正確には、私が勝手に期待を膨らませ過ぎていただけだったと言った方が正しいのだろうか?
社会の片隅で、懸命に生きる人々の姿を描く彼は、社会の矛盾や、理不尽なこの世界でも、何とか生真面目に生きようとする人々の苦悩と葛藤を描く事がテーマになる筈だ。
そんな彼が、今回はどうした事だろうか?
主人公の喧嘩早いロビーも、父親になる事で、今迄の無茶苦茶な心を入れ替えて、子供の為に更生すると言う感動的な話になる筈である。しかし、これでは単なる泥棒称賛映画である。
人生の出直しを、犯罪に手を染める事で、乗り越えようと企む若者を描く彼は、もう社会派映画監督としても詐欺であると、言わねばならない。
犯罪もばれなければ、万々歳!してやったりと言う事なのか?
もしかして、ケン・ローチは、急にコメディー映画監督に転向したのだろうか?
これも英国特有のブラックユーモアの、社会風刺の作品と言う物なのだろうか?
私は、石頭のバカと言われ様が、こう言う作品を評価出来ない。
邦画でも、人気ヒット作で、好評価だった「悪人」や「告白」もいくら世間が評価しても、犯罪者をはっきりと正面から悪いと言わない映画は絶対に評価出来ないでいる。
最近観た「ぼっちゃん」もそうだ。この世の中は矛盾だらけ、理不尽な事も多い。
人間の一生には1人や、2人は、殺したいと思う程、辛い思いをする事もある。しかし大方の庶民はそれでも、真面目に生きる事で、社会の秩序が保たれるのだ。そして人間が人間で有り、単なる動物と違う点も、理性を保って生きるところに、人間の価値が有る。
それは、現実的には、至難の業で大変な困難を伴う事であるからこそ、時に芸術作品は、そうした人間の辛さや、弱さを表現する事で、真っ当な庶民の怒りの感情を代弁しているのだ。しかしその、アーティストが犯罪者の生活を何の否定する事もなく描き、そこに至る葛藤も苦しみも描かないとなれば、これは3流コメディーだ。それ以下だ。

今年春に他界されたサッチャーは、鉄の女と言われ、一時期社会の底辺の人々を切り捨てた、格差社会を助長した政策を強行した政治家と評価された事も有ったが、彼女の政権以降英国では社会制度もしっかりとしているので、世界水準的に見比べれば、いくら失業率が高くても保証もその分手厚い国なので、決して庶民にとって棲み難い格差社会のみの国ではない。
しかし社会派と言われる人々は、社会政治や、世の中のシステムの矛盾を描こうとする余り、社会の総てを否定的に捉えようとする傾向が強くなる事もある。マスコミもアートの世界も、ニュートラルで、公平な目線で作品を作らなければ独り善がりに陥ってしまう。
個人的には、「ルート・アイリッシュ」と「セプテンバー11」など大好きな彼だけに残念だ!

ryuu topiann
無糖ブラックさんのコメント
2013年6月8日

『告白』への貴重なコメントありがとうございました

『天使の分け前』
私もケン・ローチにはがっかりさせられた気分です

『スウィート・シックスティーン』を撮った監督が
随分と安直な作品を撮るようになったなと思いました

無糖ブラック