「怪作一歩手前」クロユリ団地 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
怪作一歩手前
中田秀夫久々のジャパニーズ・ホラー。
古い団地に越してきたヒロインを、奇怪な現象が襲う…。
中田監督十八番のじっとりじわじわのホラー演出は健在。
その団地には幽霊が出るという噂話や隣室からの物音で薄気味悪さを煽り、抑えて抑えて、壁を引っ掻いたまま息絶えた老人のショック描写!
古い団地という舞台設定が、また雰囲気倍増。
隣人の顔も知らない団地特有の閉塞感、身寄りの無い高齢者の孤独死、遺品整理の業者に高速バスの居眠り事故…。現代社会の背景や時事問題も絡める。
“孤独”をテーマにしたのもイイ。冒頭から感じていたヒロインと家族の他愛も無いシーンの妙な違和感はやっぱり。
「貞子3D」なんかとは雲泥の差。こういうジャパニーズ・ホラーが見たかったと思わせてくれる。
確かに良かったのだ。終盤までは。
次第にヒロインは精神不安定になっていき、それと共にストーリーも迷走。ジャパニーズ・ホラーに有りがちなトンデモ展開に。
少年がキーとなっているが、「呪怨」のバケモノ少年と対して変わらない。
「リング」だって貞子というバケモノが出るが、あの恐怖とは全く違う。
祈祷のシーンだけコメディ。
怪作一歩手前。
前田敦子にホラーのヒロインは合わない。
「輪廻」の優香みたいに、最初からイッちゃってるヒロインにしか見えなかった。
熱演はしているけど、息遣いが荒いだけがホラーのヒロインじゃないよ、あっちゃん。
かなり厳しいレビューも目立つが、そこまで酷い駄作とは思わなかった。それこそ、「貞子3D」なんかと比べたら。
中田秀夫久々のジャパニーズ・ホラーという事で、ちょっと甘めになったかもしれない。
ただ、期待し過ぎただけ。
エンディングの“企画・秋元康”にはげんなり…。