「コンテンツやキャストは良いが演出に問題。」クロユリ団地 マイケルマイヤーズさんの映画レビュー(感想・評価)
コンテンツやキャストは良いが演出に問題。
全編を通して、
より良くできた素材を、随所に目立ってしまったツッコミどころによって活かしきれなかった作品だと考える。
怪しい団地が舞台なのは期待感があり、
色々な怪異が起きるのかと楽しみにするも、結論を先に言えば、老人と少年のみだったのはまず残念なところ。
前半の隣家の老人関連については、
怪しい音は死の直前に苦しくて壁を引っ掻いていた、と言う設定は怖くて良いが、
「死にそうな独り暮らしの老人が毎日早朝に目覚まし鳴らして何すんねん」というツッコミどころがあったり、
主人公が隣家に昼夜問わず何度も勝手に足を踏み入れる描写も不自然極まりなく、なかなか物語に入り込めず。
自分で好き好んで部屋に入っていった末に老人の霊に遭遇して騒ぐ主人公に感情移入できず、
せっかくの序盤の恐怖ハイライトとして活かされていなかった印象。
(個人的には自室に侵入される方が怖い。俳優さんの特殊メイクはまずまず。)
主人公自身の境遇と精神状態については、
それ自体を1つの怪異と見れば、恐ろしくも悲しく、とても好み。
前半の家族描写の違和感(隣人の死に関して悩む主人公への対応が淡白過ぎる・同じ台詞ややり取りが複数回ある)も納得がいき、
主人公が心を病み、妄想を抱いている不気味さは前田敦子さんの演技も含めて上手く表現されており、大変良かった。
しかし後半の少年霊との対決については、
まずなにより『少年が可愛くてよく喋るため、全く怖さがない』という、
ホラー映画における最大かつ致命的な問題があり、それが低評価の一番の要因と考える。
それを補うためか、ドアを開ける開けないの押し問答は少し緊張感があった(死んだ家族の姿と声での精神攻撃はとても良かった)が、
それさえもぶち壊にする違和感演出にツッコミ続出。
・主人公がわざわざドアの前まで行っちゃう。
・霊に返事しちゃう。
・挙げ句ドアに背中つけてモジモジしちゃう。
(↑普通悪い霊がドア開けろ言ってたら怖くてドアに近づく事もできないのでは)
・そんな主人公がドアを開けそうなのにギリギリまで止めない成宮さん。
・やめろやめろ騒いだのに最終開けちゃうのは成宮さん。
(↑逃げろーて、自分で呼び込んだくせに)
・霊媒師の本気のお祓いが全然効かない。
・ていうか霊媒師どこにいるのか分からない。玄関近くにいないから主人公を守れていない。
・主人公達の知らないうちにやられる霊媒師。
(↑もう一度言うがどこにいたのか?)
最後は少年霊のお人形さんっぷり(顔は子役俳優さん、身体は特殊造形?)に戸惑い、
主人公の、絶叫発狂床引っ掻きシーンが何故か床下からのアングルに切り替わって台無しになり大爆笑。
成宮さんが燃やされるシーンも、
あんなに短絡的ではなく、もっと絶望的な描き方があったのではないか?と首を傾げながら、
主人公は心を病んだ妄想の世界から戻って来られずバッドエンド。
映像制作を志す方は、
どこが良くてどこが改善すべき点かを学ぶための教材として見てみるのは有りかもしれない。