ゼロ・ダーク・サーティのレビュー・感想・評価
全34件中、21~34件目を表示
観てよかった。
捕虜へのアメとムチを上手く使った心理戦からの情報収集。
その情報を片っ端から調べ上げて行く過程での様々な出来事。
そして史上最高の訓練を受けた兵士たちの襲撃シーンは実践もこのように淡々と進められているのだろう…
ウソか本当か判らなくなるような妙な錯覚に陥ってゆく…
古代兵士の大軍勢が朝靄の中からザクザク出てくるようなまるでレスピーギローマの松のアッピア街道のようなBGMが水面下での現代の戦いを静かに表現する…
爆発シーンが何度もあるがとても静かな映画に感じた。
なんとも重い気持ちに…
真実の物語ではなく、証言に基づいて作られた物語。
正直なところ観賞後の感想はスッキリしたものではない。なんともモヤモヤした気持ちを抱いたまま劇場を後にした。
この作品も前作「ハート・ロッカー」同様、作り手が答えを用意するのではなく、観た人各々が答えを出すカタチになっていると思うが、あるひとつの疑問を抱かせる方向で終わっているようにも思う。
あくまでも私個人の感想だが、
ビンラディンとされる男が100%本人であるという科学的証拠は何一つ示されてはいなかった。
ラスト、リアルタイムでストーリーが進行する中、兵士が射殺された男の名前をその場にいた女性や子供に確認する場面があるが、そこでもビンラディンの名前は一言も出てきていない。
あくまでもビンラディンらしき男なのである。
「疑わしきは皆殺し」……そう感じてしまった。
あれほど慎重だったホワイトハウスなのに、100%本人であるという証拠も無いまま見切り発車的にゴーサインを出してしまった。
しかも劇中、最終的に本人確認をしたのはマヤの目視のみ。
明かに私怨と憎悪と執念に駆られたと思われるマヤの目視だけでは、その男が間違いなくビンラディンであるとはどうしても思えなかった。
もし本人であることの科学的証拠が示されていたなら、この映画の感想は全く違うものになっただろう。
それほど重要なことが抜け落ちているために、この映画の感想は、スッキリしないイヤなものになっている。
もしこれが事実なら、アメリカの敗北ではないだろうか?
そんなふうに考えてしまう。
知るべき真実とは。
もはや、このキャサリン・ビグローという監督に
この手の作品を撮らしたら、
右に出る監督は、いないだろう。
きっと、
『ハートロッカー』を観て、この作品を観た方なら、そう思うはずだ。
このデリケートな題材を映像化するにあたり、さまざまな困難や苦労はあったに違いない。
それでも、メガホンを取ったビグロー監督の男気には、頭が下がる。
憶測で、この作品や、この作戦の背景を語りたくないので、そこは観た方の判断に任せたい。
もちろん、事実を忠実に形にしたとは思うが…
この作戦後のアメリカが発表した情報は、ものすごく曖昧で少ないからだ。
もちろん、あの作戦に参加したスタッフなどから、
イロイロな情報を集め、それを本にして行く中で、多少の脚色もあるだろうが、
脚本は、言うまでもなく、すばらしい。
アメリカの失敗や失態をも、完全にブチまけ、真実にこだわる姿勢に、ブレはない。
臨場感のある映像は、ニュース映像を観ているかのようで、
クライマックスの捕獲作戦シーンでは
思わず、一発の銃声に、ビクッとしてしまうほどだ。
この手の作品は、賛否両論あるに決まっている。
真実の向こう側は、果たして。。。
これだけ話題性のある作品。
ぜひ、その目で、その耳で、鑑賞してもらいたい。
これほど後味の悪い映画も他にない
これほど後味の悪い映画も他にない。
2001年9.11の主犯をオサマ ビン ラデインと決めつけ、CIAがSEALS(米海軍特殊部隊)を使い、彼の居場所を突き止めて暗殺するまでの過程を描いた映画。独善的で一人善がりで、正義の名を借りた容疑者への私刑と虐殺を正当化する。彼らは、ガードマンも持たず、無抵抗の武器を持たないラデインを一方的に殺害した。
ビン ラデインの急襲作戦に ゴーを出したオバマ大統領は 共和党にも出来なかったことをやった、この結果を高く評価されて、超保守、愛国支持者まで味方にしてしまった。容疑者を逮捕、捜査、尋問することもなく、主犯と断定し、深夜闇に紛れて、襲って殺すという、警察も行政も裁判制度もない私刑処分をしたのは、アメリカという世界一権力を持ち、法も民主主義も持たない無法国家だ。こんなことが まかり通るなんて。
いまだ、9.11については「アルカイダという有名だが実態が把握されていない組織による犯行ではない、」とする知識人も多い。一般に報道されていることが、事実ではなく、9.11直前に巨額のドルが、ウォールストリートで動いたことや、少なくとも、ルイジアナの飛行機事故は 爆弾犯によるものではなかったという目撃者や関係者が多いことや、誰一人として犯行を公に認める声明を出していないなどなど、わかっていないことが多い。未解決事件なのだ。
CIAやアメリカ政府が作り上げたお話ではなく、客観的な事実を私たちは、知る必要がある。
上映に先だって、アメリカ国内でも上院議員のジョン マッケイン、カール レヴィン、ダイアン フェインステインらが この映画はアメリカ政府に 人々の誤解をもたらす恐れがあると声明を出した。人権擁護団体も、映画のトップシーンで CIAが捕虜を虐待するシーンで、これらが国際法違反であるという理由で抗議声明を出した。
パキスタンも この映画は、購入せずパキスタン国内では上映できないようにした。前代未聞の形でパキスタン政府を無視してパキスタン国内で、アメリカ政府が介入、軍事行動をとったことで、政府も不快と遺憾を表明した。また映画のなかで、一般のパキスタン人がアラビア語をしゃべっている。パキスタン人は、ウルドウー語か、パシュト語を話す。また映画では、一般人がHUMMUSという、ひよこ豆とごま油のペーストを食べているが、トルコ人と違って、パキスタン人は、これを食べない。パキスタン文化に無知で、基本的知識さえ欠如しているため、このフイルムはパキスタン人にとっては悪い冗談でしかない、とパキスタン人コラムニストが語っている。
ストーリー
2003年CIA分析官、マヤらはアルカイダのリーダー ビン ラデインを探し出すために、パキスタンに派遣される。ここでありとあらゆるテロリスト容疑者へ拷問をして、情報を得る。何日も食べさせず、眠らせず、ぶんなぐり、水攻めや性的拷問 何でもありだ。ビン ラデインは腎不全を患っている。常に 腎透析できる施設と医者を必要としているはずだ。当初からCIAは、顔の割れている アルカイダ ナンバー2のアブ アラハドを、追っていたが、その写真の顔は彼の弟で、すでに死亡していたことがわかった。ありとあらゆる手段で、アブ アラハトを追う。クエートのプリンスに、アルファ ロメオをプレゼントする代わりに、彼の母親の電話番号を手にする。そこから不審者をあぶり出し、ついに顔のわからなかったアブ アラハドがパキスタン国境ちかくで ある家に出入りしていることを突き止める。屋敷には数人の男女が子供たちと住んでいる。CIAの長官は、屋敷の男女は ドラッグ デイラーだと決めつけて、まじめに取り合わない。マヤは辛抱強く 監視して、この屋敷に住むのがビン ラデインに違いないことを 確信して、仲間を説得する。遂に、2代のステルスヘリコプターで、SEALSの面々が 夜間屋敷を急襲。側近の男女たちを、手あたり次第に次々殺していって、泣き叫けぶ子供たちに、ビン ラデインの部屋かどうかを確認したうえで、中に居た無抵抗の男を 殺害。何発もの銃撃をしたうえで、ラデインと確認する。というストーリー。映画の中では少なくとも ラデインとされる男以外に3人の男女を殺害しているが、実際はどうだった、誰にもわからない。
SEALSの元隊員マット ビソネットが、ペンネームでこの作戦の内幕を克明に描いた本を出版。これが映画の参考になっている。マット ビソネット自身が、ビン ラデインに銃弾を撃ち込んだそうだ。
SEALSはアメリカ人にとってはヒーローだが、本来は名前も顔もわからない秘密の存在だ。国のために自己犠牲の精神で特殊作戦を戦い、戦果を一般人に知られることはない。退職後も彼らは どんな作戦に従事したか、家族にも語ってはならないことになっている。この愛国の戦士の名前と顔が 表に出るときは、死んだときだけだ。
例えば、2006年イラクで銃撃戦の最中 窓を破って手りゅう弾が飛んできた。一瞬のスキもなくマイケル モンスール隊員は手りゅう弾の上に覆いかぶさり 体で爆発を受け、他の仲間たちの命を救った。2005年アフガニスタンでSEALSのヘリコプターが40人のタリバンに囲まれた。米兵全員が負傷、マイケル マーフィー隊員は覚悟を決め、電波の通じやすい広場に走り、全身に銃弾を受けながら無線で友軍の救助を依頼しながら絶命した。ニュースウィークによると、己の命を捨てて仲間を助けることがSEALSの伝統だそうだ。これも、アメリカ人の自画自賛で、マット ビソネットの自伝や、この映画などが、契機になってSEALSに入隊したいと思う人も多いのだろう。
映画の中で、CIA分析官マヤが 自分の生活とか、趣味とか男遊びとか酒やドラッグなど見向きもせずに仕事にうちこんで、それがなぜかというと、9.11が動機になっていることは、わかる。事実こうした職員も多かっただろう。また、SEALSの隊員どうし 互いに命をあずけ合った仲間と仲間の友情も、本当のことで、実際にあるだろう。
しかし、映画を見ていて、一瞬たりとも共感できるシーンがない。正義はどこにいったのだ。こんなことをアメリカという国が大手を振ってやっている。許されて良いことではない。
デリケートな題材を扱ってるだけの映画
ドキュメンタリーのような映画になっている。
ビンラディンの最後を題材にしている
デリケートな題材だけに誇張せずにしっかり作っていると思う。
アメリカよりの話なので真実とは違うのだろうけど。
ただそれだけ。
この映画はデリケートな話題を扱っているだけの映画で
しっかり作ってあるが、普通の映画。
最も卑劣で効果的な。
またしてもこの時期に^^;
アカデミー賞戦を割るように突っ込んできたK・ビグローの最新作。
前作ハートロッカーで、その手腕を知らしめてしまった女性監督は、
ビンラディン殺害計画の内幕を(証言に基づいて)全面暴露している。
…大統領選を控えた政権陣営が震え上がったのは言うまでもない。
娯楽性を欠いた作りにはファンが期待するようなドラマはないし、
ひたすら(真実を)語る切り口に観応えをどう得るかは様々だと思う。
結局アメリカはアメリカだった。と、やっていることはそのものだ。
それを当たり前のように突きつけてくる話であり、爽快感などない。
アメリカ万歳!的な作りになっていないことは分かるが、
今作のテーマは主人公マヤの孤独な闘いであり、やはり復讐戦だ。
CIA分析官という特殊な任務に就く彼女にとって、そこに個人的な
感情や執着(他のチーム員同様)は持ち合わせていない冒頭だが、
その後の進まない捜査の進展、同僚がテロに巻き込まれ殺害される
という脅威を経て、彼女が段々強い執念を帯びてくるのが分かる。
(上司への強い苛立ちは迫力満点。狂気が決断を促したってことね。)
風化されかけた(言い方が悪いけど)凶悪テロの犯人を執念を持って
捜査するためには、莫大な資金と忍耐力が必要になってくるが、
どうしてそんなに執念を燃やせるのかを考えると、やはり個人的な
恨み・辛みが一番になると思う。というよりそれがなければできない。
その先に待つものが何だとか、それをやればどういうことになるか、
そんなことは分かっていても必ず報復を遂げるのが最強国の使命で、
彼女に与えられた任務なのだから、致し方ないのである。
…というのを最後の最後まで、まざまざと体感させてくる作品なのだ。
ちなみに女というのは、勘が鋭い。これが、けっこう当たる(爆)
いや、本当に笑いごとではなくて、これって実際にあるんだと思う。
だから夫の浮気とか(例えが悪い?)鼻が利くんだろうと思う。そういう
動物的な生理現象にきちんと耳を傾けてくれる組織であるのは有り難い。
とはいえ、確信が持てない潜伏先に100%!って言える自信も大したもの。
物事を決めるまではウダウダと悩んでも、一度決断したら梃子でもその
意思を曲げないっていう、頑なな意思表示も女ならでは。
あのビンラディンの最大の弱点は、鼻が利く女。だったのね。
(あれだけ用心して潜伏してるのに、見つかる時はアッサリだもんね)
バカな男共(ゴメンね)は、人質を拷問にかけて仲間の名を聞きだすが、
肝心なものはそんなところから出てこない。
ところであの拷問、K・ローチのルートアイリッシュでも使われていたが
ああやってタオルで水責めにした方がプールに沈めるより効果的らしい。
う~、やだ、こんなことまで知ってしまった。。
淡々と進行する作戦のクライマックスは何といっても突入シーンだが、
個人的には思ったほどスリリングではなかった(前作よりもまったく)
これはどうしてか、と考えると作りものではないからか?と思った。
ネイビーシールズが着々と作戦を遂行するカッコ良さがウリなのではなく、
ブラックホークが墜落したり、施錠が開かず何度も爆破を繰り返したり、
(あれでよく3階まで辿りつけたと思う)
家族とはいえ民間人を次々と射殺してトドメまで刺す描写のリアルさに
これが本当の「作戦遂行」場面なのだ、と面を喰う。
寝込みを襲うという、最も卑劣ながら最も効果的な殺害方法を遂行した
といえば、日本でも歴史に名高い「討ち入り」や「変」があるけれど、
一度で確実にやり遂げるため、そういう手を使うのは万国共通だったのね。
ぞんざいに置かれた死体袋に近づき、確認するマヤの顔に笑顔はない。
達成感も高揚も感じさせないその表情に、今作の言いたいことが分かる。
操縦士の「アンタ、どこへ行きたいんだ?」に応えず、泣き崩れるマヤ。
やっとここで彼女の人間的な一面が垣間見えるが、これで終わりじゃない。
(現在も任務についているマヤの背景は、やはり何も語られなかったねぇ)
絶対的なインパクトが有り、迫力は感じるが、それだけで終わってはならない!
本作品は世界的テロ組織アルカイダの主犯格の暗殺作戦が実行される迄のプロセスを描いて行く、超一級のサスペンス大作映画と言う事が出来るだろう。
確かに、2001年の世界同時多発テロと言うあの事件はまぎれもなく世界の多くの人々に多大な衝撃を与えた事件だった。
しかし、アメリカのその後に続く、アフガニスタン侵攻やイラク戦争へと事はエスカレートして戦争が発展し、多大な被害を世界中に出し続けていった。
その事で多くの罪無き一般市民が空爆などで亡くなって、この911テロの被害より報復戦争による被害の方がその数百倍もの被害を出し続けている事実を決して忘れてはいけない。
それだからこそ、この911事件の真相究明は大切な問題だと思う。
その根源的な世界同時多発テロを企てた主犯格の男こそ、オサマビンラディンと言うわけだが、出来る事なら、アメリカのCIAには、オサマビンラディンを生け捕りにして、国連法によって、その犯行の全貌を明らかにして、この男を国際連邦の裁判に因って刑に処する事を計画して欲しかったと個人的には思っていたのだが、残念な事にオサマビンラディンの逮捕は現実には起きなかった。
この映画でも描いているように、CIAの調査なども、担当当局の人間関係や、その人達の個人的な、仕事の立場や面子と言う事柄までも絡んでくるし、その時代の政治や政治家達との連動などによって、真実公正なる正義の名の基で、真相究明目的のみの為に事件の解決への目標が設定される事は無い、真実究明の足掛かりとしてのオサマビンラディン逮捕が行われる事は無いと言う真実を描き、その現実社会の構造的問題を含んで描いている点は、本作品が単なるCIAのプロパガンダ映画として終わっていない唯一の救いである。
しかし、この映画がアカデミー賞候補となりまた世界的な規模のマーケットに乗って順次この作品が公開されていったとしたら、あの「96時間リベンジ」の映画の様に、テロ組織の痛恨を煽る事にはなりはしないかと、正直恐くもある。
国際テロ組織は絶対に無くなって欲しいし、日本ばかりでは無く、世界中の何処の国であっても、テロ事件は絶対に起きて欲しく無いものだ。
そう言うテロ組織との憎しみの連鎖は、一体、何時・何処で解決する事が出来ると言うのだろうか?
日本でも戦国時代、戦では敵の一族は皆殺しする事で、報復を阻止して来たけれども、必ず武力に因る制裁は、報復というリスクを追う事になるのが世の常であるし、現実的には実態の特定が出来ない国際テロ組織なるものの、関係者の取り締まりや、ましてやその関係者による、憎しみの連鎖の阻止など、アメリカ政府は今後どう解決していくのだろうか?
この作品は今後起きるかも知れないテロ事件のリスクに対する多くの不安を煽る映画でもある様に感じた。この作品の監督キャスリン・ビグローは世界の平和を願ってこの作品や、「ハートロッカー」を制作した事だろう。彼女の願いが天に届き、私達の暮す地球に、テロ事件や戦争と言う人災が起こる事の無い事を願って止まない。彼女と脚本家のマーク・ボールには今後楽しい映画を制作して平和を実現して欲しいと願っている。
『アメリカ ケジメに過ぎぬ 砂時計』
9・11テロの首謀者ウサマ・ビンラディンの捕獲を命じられた女性CIA捜査官の執念深い追跡を描いた作品。
あの悲劇に向かい合うアメリカの正義や苦悩を主題にしたアプローチは典型的プロパガンダ映画の一つだが、『ブッシュ』『グリーン・ゾーン』『華氏911』etc.とは極めて異なる位置を発する。
冒頭のアルカイダ捕虜に問答無用の拷問を強いるシーンの時点で、アメリカの正義感・愛国心は既に置き去りと化しているからだ。
多くの犠牲を目の当たりにし、主人公が疲弊していく様は同監督の『ハート・ロッカー』の第二章に通ずる。
現場で実際に血を流す兵士とは違い、本部から指示をする立場としての客観性が、砂まみれの血生臭さを若干和らげてくれるのが、希少な救いの一つかもしれない。
報復行為で仲間をテロに殺されたり、他の事件に追われた国家が作戦の協力を疎かにされる苛立ちがビンラディン追跡への原動力に繋がっていくのは哀しい皮肉である。
そもそもビンラディンを仕留めたからと云っても、世界が平和に戻るワケではない。
喧嘩を仕掛けられ、面目を潰されたアメリカのケジメの一つに過ぎず、虚無感の砂塵にまみれる主人公の気怠い表情が、疲労困憊したアメリカ社会そのもののようで、尚更、後味が重苦しく感じた。
北朝鮮の動向次第で、日本も同じ悲痛の道を辿るのかもしれへんなと思うと、主人公の濁った瞳が
「日本人だって他人ごとではないわよ」と忠告しているような気がして仕方ない。
日本の今を憂いながら、最後に短歌を一首
『イヌ吊し 悪夢も霞む 砂時計 ケジメ射抜けど 見失う的』
by全竜
迫真力に満ちた力作だが、詰まるところは米国のプロパガンダ映画?別視点からの作品も同時に観ることをお薦めします。
こんにちは。
グランマムの試写室情報です。
『ゼロ・ダーク・サーティ』★★
オスカー作品賞ほか、5部門ノミネートされ、最有力候補と言われている本作。
GG 主演女優賞をジェシカ・チャスティンが受賞するなど、多くの映画祭で最高の評価を受けている。
ストーリーについては、多くの皆さんが既にご存知と思うのて、ネタバレも気にせず書いてゆく。その辺、ご容赦願いたい。
9.11の首謀者と目されるオサマ・ビン・ラディン捜索調査に関わったCIA 女性捜査官が、作戦の遂行の中心人物だったという事実。
それを知ったキャスリーン・ビグロー監督と脚本家の『ハート・ロッカー』コンビが、極秘事項だった全貌をサスペンスタッチに仕上げた作品だ。
断っておきますが、政治情勢に関しては疎いし、知識もない、純粋に映画を語りた いがために、記している日記だ。
なので、これから書く内容について、異論反論の向きもあろうが、政治的な反論に関しては、ご容赦願いたい。
冷戦終結後、予算削減されていたCIA が、9.11同時多発テロを機に、復活した。
若い優秀な分析官が登用され、その1人が本作の主人公マヤだ。赴任するなり、捕虜の水責め拷問場面に立ち会うが、あまりの惨さに目を背ける。
ところが、その後、眠らせない、強力な光を当て続ける、爆音で音を聴かせ続ける(注:本作にはないが、ウィンターボトム監督、ドキュメンタリーなどで散見)といった“身体に痕跡を残さない”やり口で、吐かせるのだから、冒頭の目を背ける表情も偽善に映る。
同僚(ジェニファー・イーリー『高慢と偏見』などで好演)たちが、自爆テロの犠牲になり、死んでしまうに至り、執念的に追い始める。
莫大な予算を要したにも関わらず、ビン・ラディンの消息情報すら得られない現状に、CIA はプレッシャーをかける。
人為的ミスにより、要注意人物のリストを見逃す失態を犯すチーム。マヤは、独自調査と無謀とも言える追跡を重ね、潜伏先の邸宅を突き止める。
だが、国からの実行ゴーサインがでない。イライラを隠せないマヤ。ビン・ラディン捕獲作戦の実行部隊は、ネイビーシールズだ。
大統領への直訴が実り、2011.5.1、深夜0時半(ゼロ・ダーク・サーティ)作戦は実行される。レーダーに映らないステルス型戦闘機に乗り込む隊員に、マヤは言う。
「私のために殺して!」
殺す??捕獲作戦じゃないの?殺害作戦だったの?と思いながら観ていくと、屋敷に潜入した隊員たちは、無抵抗な寝間着姿の男女たちをバンバン殺して行く。
目の前で、両親、家族を殺され、恐怖に泣き叫ぶ子どもたち。
ついにビン・ラディンを見つけ出した隊員たちは、躊躇なく撃ちまくる。やはり、殺害作戦だったのだ。
手柄を立てた、と賞賛され、たった1人で専用機を仕立て、帰国するマヤに、笑顔はない…。
プレスシートには、“狂気を孕んだ執念で”と書かれているが、マヤは終始、正気のままだったように映った。
ビン・ラディンを、9.11同時多発テロの首謀者と断定し、作戦を実行した米国。
素朴な疑問として、裁きは国際裁判で司法の手に委ねるのが、本来ではないのか??殺したら真相は分からない。
生きたまま捕獲し、喋られたら困ることでもあるのだろうか??政治に疎い自分でも、この作戦には、素朴に疑問感を持つ。
ハリウッドだから、自国の立場で製作するのは、仕方ない。だが、昔から世論を喚起するほどの批判精神旺盛な米国映画は、どこへ行ったのか??
作品のクォリティーについて、語りたい。
キャスリーン・ビグローは、第一作目の『ニア・ダーク/月夜の出来事』から魅了されていた監督だ。
ヴァンパイアの世界をリリカルに描き、月夜に浮かぶ儚い恋物語を紡ぐ映像美は見事だった。
続く『ブルー・スチール』『ハート・ブルー』『ストレンジ・デイズ』とも、透明感があり、グラマラスな映像で楽しませてくれた。
前作『ハート・ロッカー』でも、冒頭のハイ・スピードカメラには、圧倒的な映像の喚起力があった。
本作では、その豊かな表現力が、いつ観られるのかと期待するも、平凡な映像の連続。
強いて言えばラストの緊迫感溢れる深夜の捕獲作戦場面にみられるが、前述したように、武装していない無抵抗な女の人まで、次々と撃ち殺していくのだ。
上手く撮れていても、気分が良い訳がない!
問題作であることには違いないが、結局のところ、「捕まえた〜!撃った〜!殺した〜!」という単純な闘争本能に訴えるプロパガンダ映画になっているとしか思えない。
本作と、同じくオスカー候補の『アルゴ』しか観ないとすると、観客の世界観は、どうなってしまうのだろう。
様々な視点から、世界を捉えることのできるのが、映画の良さだ。本作を観た人には、同時にマイケル・ウィンターボトム監督作『グァンタナモ 僕たちの見た真実』、そして『スタンダード・オペレーティング・プロシージャー アブグレイブ刑務所の証言』も、観ることをお薦めする。
『グァンタナモ〜』は、パキスタン系の英国人が、アルカイダのテロリストに間違えられ、過酷な拷問を受けた事実を、『スタンダード〜』は、米軍によるイラク人捕虜虐待の真相に迫った力作である。
確かに、9.11は米国にとって衝撃で あり、それを引き起こすテロリ ストへの警戒心があるのは理解できる。
し かし、それが法を適用せずに虐待行為を引き 起こし、首謀者と目した人物を殺害してよいという理由にはならない。
オバマ大統領は、これらの収容所閉鎖を打ち出したが、未だに達成できていない。
私たち日本人にとって、友好関係にある米国だが、エンターテイメントの世界観は、国際的な視野に立って観ることを忘れることなく、オスカーの行方を注視したい。
本作は、2月15日から全国公開されます。
報復の連鎖は、いつになったら・・・
911アメリカ同時多発テロ事件が起こったのは、もう11年以上前の2001年だ。
その時の様子から始まる。
音声のみで。
これだけで、緊張感は高まる。
キャスリン・ビグロー監督は、事実の断片をかき集め、証言を検証し、物語を構築されたようだ。
11年以上も前の事なので、私の記憶から抜け落ちていたことも、この作品で再び思い起こされることとなった。
CIAは、人権を無視して捕虜を痛めつけ、証言を得ようとする。
でも、その証言は、信じられるのか??
信じられないのか??
そして、国家の威信とは?!
ビンラディンを追い詰める間にも、ロンドンで同時多発テロが発生した。
また、同僚をテロで亡くした。
マヤのスイッチが入った瞬間だ。
ビンラディンが亡くなったことは知っているので、展開はわかる。
でも、そこへ辿り着くまでの過程が、凄い。
マヤの孤高の執念だ。
感情を表すことが少なく、憔悴しきった様子がよくわかる。
カナリア達も、ステキな軍団だったのですね。
ゼロ・ダーク・サーティとは、アメリカ軍用語で、午前0時30分のこと。
でも、最後にマヤが流す涙は、達成感ではなく喪失感。
やり遂げた嬉しさではなく、悲しさ。
心に残ったのは、どこへ行くともわからない漂流感でしょうか。
この作品が伝えたいのは、復讐の達成ではない。
報復の連鎖から生まれるものは無い。
そのことでしょう。
難を言えば、少し時間が長いので、緊張感が持続しにくく、中だるみがあった。
それも、作品中のCIA現場と同じ空気だったのかもしれないけれど。
アメリカの正義
ビンラディンを殺すまでマヤもアメリカも怪物を殺すつもりでいました。
しかし、ビンラディンの死体を見たとき、彼女が執念に取り憑かれ、殺そうとしていたのは1人の人間だったことを認識します。
その時、彼女を襲ったのは虚無感。
この10年間、なんだったんだろう。。
アメリカ人はきっとそう思ったはずです。
重く、衝撃的な映画でした。
物足りない!
『ビンラディンを追い詰めたのは、ひとりの女性だった』というコピーに惹かれて見た映画。
ビン・ラディンの死については謎に包まれた部分も多く、この映画を見れば、新たな事実が分かるかもしれない。と思い期待に胸を弾ませて見に行きました。
期待外れだったなーというのが正直な感想。
まず、出演者全員の人となりが最初から最後まで殆ど分からない。
CIAを題材にしてるから当然なのかもしれないが、もうちょっと深く切り込んで欲しかった。
そしてもう1つ、ビン・ラディンを殺害するに至った経緯(生け捕りにしなかった経緯)も描いて欲しかった。
とにかく色々と物足りない映画でした。
ただ、主演のジェシカ・チャスティンは素敵でした。
これが創作のCIA映画で色々な表情をもっと見る事が出来たらもう少し魅力が分かったかも。
この映画を見るのであれば、ヒストリーチャンネルの『ビンラディン殺害計画の軌跡』でも見た方が良いかもしれません。
最近新しさが殆どない映画業界、もっと革新的なものを今後期待します。
世界は変わるのか、彼女はどこへ行くのか
最後の突入作戦のところは緊迫感ありすぎて、見終わってグッタリ。もちろん、本物の映画をみたなという疲労感ですが。
どこまで本当なのか……本当だとして主人公の女性分析官も実在の人物なわけで、あの後どうなったのか……いま何を持っているのかと考えてしまうと、なんとも筆舌に尽くしがたい。
最後「どこに行くんだ?」と問われた彼女がなにも答えずに終わるラストシーンが非常に印象的で、余計にそう感じさせられました。緊張は強いられる作品ですけど、終わったあとはむなしさもあったり。
おりしも現実社会ではアルジェリアで人質事件が起こり、あれも結局はアルカイダ系組織の犯行なわけで、ビンラディンを捕まえても世界は簡単には変わらなかった。そう思うと、なんだか主人公の執念の結果がなにをもたらしたのだろうと考えてしまいますね。
主人公がなぜそこまで執念をもってビンラディンを追うのか…その詳しい動機は説明されませんし、マヤという人間のバックボーンも、映画冒頭で赴任してきたときに「若いけど優秀らしい」と言われているくらいしか観客にも情報がない。
でも、そうした余計なドラマが付け加えていられないのが逆にリアルで、彼女は何を思っているのだろう、どうするのだろう…と思って思わず見入ってしまいます。
全34件中、21~34件目を表示