劇場公開日 2013年2月15日

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「娯楽を超えた、事実を伝えようとする監督の気迫が物語る深いものを感じ取れた」ゼロ・ダーク・サーティ willstrongさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0娯楽を超えた、事実を伝えようとする監督の気迫が物語る深いものを感じ取れた

2013年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

面白い面白くないという娯楽的判断を超えるなにかを受け取ったような気がした 監督もそういう思いから一般的には最後に映す、事実に基づくという注意書きを始めに持ってきたのではないだろうか。
米国が受けた壮絶な悲劇 対するテロリストは祖国で身を潜め生きながらえる 報復を誓い、それに全てを費やしてきたCIAの女性、その当事者が語り、ハートロッカーで史上初のオスカー受賞となった女性監督が表現する。これは両者が女性であったことで成し得たのではと思える
現地でビンラディンの最期を見届けた彼女と、同性とし通じ合えたからこそ娯楽を超えた信念がドキュメンタリーのような世界観を表現できたのではないかと

 はじめは新人CIAでパキスタン入りした彼女だが、希望していたわけでもなく信念もなにもなかった それが日に日に現地の危険と隣り合わせの生活、常にテロを意識し、その主犯が潜むだろうその地で世界の安全と祖国の報復の為に、捕虜を拉致し、拷問虐待を目の当たりにし尋問を繰り返す そうした中で自然と強くなり、責任感ある姿勢で臨むようになる 彼女の内面の変化や成長、事実に基づくテロ事件の裏で行われているCIAの作戦や内部での葛藤 それをこんな簡潔にうまくまとめる監督の力が素晴らしい
 長い期間をかけ、徐々に外堀を固めるように主犯格に迫るが、幹部を捕らえるほどに周囲が危険になり、目的を同じにした仲間が殺され自身も狙われ、仕事としてビンラディンを追うというノルマから、私怨にも似た思いが絶対にビンラディンを殺す、と彼女を突き動かしていく アルカイダがいかに狡猾で悲惨なテロリストかということが非常によくわかり、その中心に身を置くことがどれほど怖いことかは計り知れない
 クライマックスのビンラディン邸を奇襲するシーンは、現実感があり緊迫した状況が感じ取れ、ラストのビンラディンの遺体を確認するシーンは、12年の言葉では表せない達成感と、共に虚無感が伝わり鳥肌が立った 姑息で残酷なテロという絶対悪に対し、小数精鋭でまさしく必死に長期間諜報活動をしてきた忍耐と頭脳、気迫の勝利であることは間違いなく、彼女をはじめ祖国の安全を守る人たちが裏で血の滲む努力をしていることを深く心に留めたい またこれを映像として表現してくれたビグロー監督に感謝する

bp